ついに判明した「不当に低い保育士給与」の実際 過酷な労働環境のなか子どもを守れるのか
これまで全国平均でしかわからなかった保育士の人件費の金額が、2021年度から地域ごとにわかるようになる。内閣府の初の試みで通知が改定され、全国を8つに分けた地域区分別の公費から出ている人件費額が示される。
本媒体でこの第一報を打った2月26日、内閣府は都道府県などの自治体に対し通知改定について知らせ、資料も公開した。
4月に新入園児として保育園に通う子も多いはず。子どもの安心、安全を守るには、低く抑えられている保育士の給与水準の改善は不可欠だ。その一端を担うであろう通知改定の意味について、考えたい。
依然として下回る保育士の処遇
「今まで全国各地域の保育士は、本来どのくらいの賃金をもらえるのか、もらえるはずの賃金が抑えられているのかどうか分からずにいました。そのため、私は国に対して、公費で出している人件費の額は全国平均ではなく、各地の数値を出すよう求めてきました。来年度から通知を改定して各地の人件費額を出すと内閣府から報告を受けました。
通知改定によって何が分かるようになるか。東京23区の場合、今年度でいうと処遇改善が最大でつくと、年間の賃金は約565万円になります。実際に受け取る年間賃金は約381万円ですから、約184万円もの差があることが分かるようになる。このような『見える化』は、保育士の処遇改善にとって大きな前進になると思います」
3月4日の参議院予算委員会で、片山大介議員が通知改定の意義について強調した。東京23区を例にした公費と実際の賃金の差額がパネルで示されると、その金額の大きさに議場はどよめいた。通知改定の効果について坂本哲志・少子化対策担当大臣は、こう答弁した。
「2021年度から初めての通知改定で地域区分別に『予算積算上の人件費額』を示すことで、各保育園の賃金水準について確認するための参考にできるようになります。これは各保育園にとっても人件費を支出する参考になります。自治体にとっては、各保育園の人件費の水準を確認するための参考になり、通知の金額と差があった場合、差が生じる理由について説明を求めることが可能となります。
一方、一定の注意も必要で、配置基準を超えて多くの保育士を配置すると一人当たりの賃金が低くなることもあります。保育士の経験年数、賃金体系も各園で違うため、通知の人件費との差だけを見るのは適当ではないことを、通知を出す時には自治体に周知したい」
保育士の処遇改善は急務の課題とされてきたが、依然として全産業平均を大きく下回っている状態だ。保育単価の「公定価格」(基本分)の内訳は通知で示され、2020年度の保育士の人件費額は全国平均で約394万円となっている(人件費額には賞与や手当を含むが、法定福利費や国の処遇改善加算は含まない)。ただ、全国平均では、各地の保育士のあるべき賃金水準が具体的にイメージできないこともあり、内閣府は8区分に分かれた地域区分の人件費の額を通知で出すことに踏み切ったのだった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら