保育士という報われない職業の過酷すぎる現場

業務量や責任は増えるのに人手が足りてない

疲弊した現場から離れていく保育士も多い(写真:maroke/iStock)

幼児教育・保育の無償化が10月から始まる。年約8000億円の予算が投じられ、所得制限なく3歳から5歳の子の保育園や幼稚園の保育料が無料となる。無償化は「認可保育園」や「幼保連携型認定こども園」などに加え、「認可外保育施設」なども対象になる。

国は認可外施設についても、保育士の配置や保育室の面積などの指導監督基準を設けている。ただ認可保育所では原則全員が保育士資格を持つのに対し、認可外施設は3分の1以上が保育士であればよいなど基準は緩い。今回の無償化はその緩い基準すら満たさない施設でも、経過措置として5年間は無償化の対象とされる。「これまで指導や処分の対象としてきた施設を無償化の対象としてしまっては、国が質の低い施設にお墨付きを与えることになりかねない」。保育事故の問題に詳しい寺町東子弁護士は懸念する。

『週刊東洋経済』は9月17日発売号(9月21日号)で、「子どもの命を守る」を特集。親からの虐待や不慮の事故の問題とあわせ、保育園をめぐる問題についてもさまざまな切り口からレポートしている。

保育園などで子どもが死亡したり、大ケガをしたりする重大事故が後を絶たない。2015年から法令上、事故報告が義務付けられたこともあるが、その後をみてもここ数年、保育施設における重大事故件数は急増している。内閣府の調べによると、2018年に全治30日以上の大ケガをした子どもは約1200人に上る。この年の死亡事故は9件で、このうち6件が認可外施設で起きている。2004年からの死亡事故の報告件数の累計では、認可保育所が61件なのに対して、認可外施設は137件と倍以上だ。

保育園はパワハラとサービス残業が蔓延

こうした重大事故の急増の背景の一つに、保育士の不足が挙げられる。待機児童の解消のため、政府は都市部を中心に保育園の整備を急ピッチで進めている。保育士の有効求人倍率は急上昇しており、開園数に対して保育士の確保が追いつかず、経験の浅い保育士が現場で責任を持たされているのが実情だ。

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疲弊した現場から離れていく保育士は多い。「保育士から寄せられる相談で多いのが、職場のパワーハラスメントとサービス残業の強要だ」。保育士等を組織する全国福祉保育労働組合の澤村直書記長はそう話す。同組合に相談したある20代の女性保育士は、園長、主任からの執拗なパワハラで体調を崩し、うつ病とパニック障害と診断されたという。

「役所からの天下りで現場を知らない園長がいて、気に入らないことがあると保育中でも呼び出し、怒鳴りつける。開園7年ですでに30人近くの保育士が辞めている」。40代の女性保育士は、以前働いていた都内の保育園の実情をそう語る。「子どもにケガをさせた場合、通常なら園長や主任が担当保育士と一緒に謝罪する。だが園長がすべて保育士に責任を押しつけた結果、メンタルを病んだ保育士もいる。年度の途中で退職した保育士もいた。辞めるのは年度末というのが保育士文化。待てなかったのは、よほど限界に近づいていたのだろう」。

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