ついに判明した「不当に低い保育士給与」の実際 過酷な労働環境のなか子どもを守れるのか
認可保育園の運営費用は公定価格に基づき、その園で必要な費用が「委託費」として各園に給付される。その8割以上が人件費を占める。ところが、「委託費の弾力運用」という制度によって、大部分を占める人件費をほかに流用してもいい仕組みがある。同一法人が運営する他の保育施設や介護施設への流用、新たな保育園を作る施設整備費にも回すことができ、多くは新しく保育園を作るための費用に委託費が流用されている。また、経営者による不正な私的流用も発覚している。
個人加入できる労働組合の介護・保育ユニオンの組合員になった中堅の男性保育士(経験11年、都内の認可保育園勤務)の年収は約360万円。保育士の配置が最低基準ギリギリで、人手不足状態で長時間労働が常態化しているという。男性は、「新しい保育園を作るために保育士の人件費が削られている」とみている。
彼の勤務先の保育園が該当する地域区分で計算すると、公定価格に国と都の処遇改善の最大額を足すと年間賃金は約550万円だった。公費との差は年200万円に上る計算だ。このような実態から、同ユニオンの三浦かおり共同代表は通知改定の効果を期待する。
「ユニオンに相談する保育士の多くが年収300万円台で、残業しても割増賃金が未払い状態になっています。保育士数は配置基準ギリギリです。通知改定により人件費との差額がどう使われているのかと団体交渉の場でも説明を求めやすくなり、検証もしやすくなります。その差額が何に使われたかがわかれば、保育がビジネス化されている実態の解明の後押しとなると思います。今後、事業者が言い逃れしないよう、国は適切な給与水準の基準を設け、国や自治体は給与の実態を調査して委託費の弾力運用に規制をかけていくことが求められます」
低賃金で長時間労働の中、子どもを守れるのか
保育士の処遇の状況は、保育の質に大きく影響する。その一例として、保育事故の急増が挙げられる。
一般的に「認可保育園なら安心」と思われているが、保育士が低賃金で長時間労働となれば、子どもを守ることができるだろうか。保育施設で子どもを亡くした遺族らによる団体「赤ちゃんの急死を考える会」の小山義夫会長は、こう話す。
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