雇用調整助成金が失業率の上昇を抑えてきた
雇用調整助成金で手厚い特例措置が設けられたため、休業者が失業せずに済んでいる。コロナ禍にもかかわらず日本の失業率が低く抑えられている基本的な理由は、これだ。しかし、特例措置がずるずると延長された結果、支給総額が巨額になり、財源が枯渇している。
コロナが収束すれば休業者は復職するとの期待があるのだろう。しかし、そうなるかどうか疑問だ。なぜなら、零細企業などでは、事業再開に必要な固定資産を処分してしまっているケースがあるからだ。大規模な雇用転換政策が必要だ。
政府は2月12日、雇用調整助成金の特例措置を、感染が拡大している地域や経営が厳しい企業に限り、今年6月末まで、延長することを決めた。
いままで延長を続けてきた特例措置を、限定的ではあるが、さらに延長することになる。
これまで、雇用調整助成金は失業率の上昇を抑えてきた。
昨年春に経済活動が急激に落ち込んだとき、リーマンショック時並みに上昇すると予測された。
ところが、実際には、失業率は上昇せず、昨年12月の段階で2.9%にとどまっている。リーマンショック時に失業率が2009年7月に5.5%まで悪化したのと、大きな違いだ。
なぜ今回は、このように失業率が低く抑えられているのか?
その理由は、雇用調整助成金によって休業者を支えているため、休業者が解雇されないで済んでいるからだ。
実際、雇用調整助成金の支給総額は、著しく膨れ上がっている。
リーマンショックの際には、雇用調整助成金の支給金額は、2009年に6536億円になった。それに対して、今回は、今年1月末の段階で、支給決定額は2兆7658億円に上る。すでに4倍以上だ。
雇用調整助成金の申請件数や支給総額がリーマンショック時よりもずっと多くなった基本的な理由は、特例措置だ。
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