コロナで仕事失う人と何ともない人に映る格差 救済されず不満の蓄積と分断がもたらされる

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会社依存社会でいいのか(写真:MF3d/iStock)
昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第34回。

立場によって大きな差、雇われている限り安全

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済情勢の変化が人々の所得に与える影響は、人によって大きな差があります。ほとんど影響を受けていない人がいる反面で、甚大な影響を受けている人がいます。これまでもあった格差が拡大するとともに、新しい格差が生じています。政府の対策は、こうした事態に適切に対応できていません。

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新型コロナ問題の特徴は、人によって直面している問題が大きく異なり、一様ではないことです。

前回「80歳の私が政府のコロナ対策に強く切望する事」(2020年12月20日配信)はコロナという病疫の危険度が個人によって大きく違うことを述べました。健康な若者にとっては単なる風邪のようなものであっても、高齢者や基礎疾患を持っている人には、大きなリスクとなります。

経済的影響についても、同じことがいえます。問題は一様ではなく、立場によって大きな違いがあります。所得がどれだけ減ったか、経済的状況がどう変わったかは、人によって非常に違うのです。

しかも、深刻な影響を受けている人は、全体から見れば少数です。

コロナの経済的影響としてまず注目したいのは、勤労者世帯の収入が下落していないことです。

家計調査報告によると、勤労者世帯の名目実収入の対前年同月比は、2020年1月以降、プラスの値が続いており、10月では2.0%です。

法人企業統計調査をみても、賃金はあまり大きく下がっていません。

全産業、全規模で、2020年7~9月期の賃金(人件費/人員数)は、2.30%減少しているだけです。

後でみるように利益が極めて大きく減少している宿泊業、飲食業、娯楽業においてさえ、減少率は全体と同程度です。

つまり、雇われ続けている限り、生活はそれほど大きな影響を受けていないといえます。

もちろん、現状に問題がないというわけではありません。「雇われ続けていれば安全」ということであって、解雇されれば収入がなくなります。

つまり、問題は、雇われ続けられるかどうかです。

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