宿泊業に従事する人の苦境どうすれば救えるか GoToで潤わなかった零細業者の業績悪化は深刻

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コロナは人の移動を制限し、宿泊業界に深刻なダメージを与えている(昨年10月の羽田空港、写真:ブルームバーグ)
昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第35回。

新型コロナウイルスによって最も大きな影響を受けている部門の1つが、宿泊業です。とくに零細企業が大きな打撃を受けており、人員を3分の1程度にまで削減しても、なおかつ、1企業の月当たり赤字が264万円という窮状です。

宿泊業でも大企業は、赤字ではあるものの、人員削減率は7%程度です。GoToトラベルは、大企業には支援になった可能性があります。

今後の支援策を考えるには、こうした事情を勘案する必要があります。

今後も支援が必要、現状の正確な把握を

コロナの感染が収束せず、2回目の緊急事態宣言下で、飲食業等に対する時短要請がなされています。今後も支援策が継続して必要になる可能性があります。

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ところで、前回の記事(「コロナで仕事失う人と何ともない人に映る格差」2020年1月10日配信)述べたように、経済収縮の影響は、業種や企業規模によって大きな違いがあります。

対策を行うのであれば、その状況を的確に把握したうえで行う必要があります。

そうでないと、必要なところに支援が届かず、必要のないところに過剰な支援がなされる危険があります。

現在の状況については、法人企業統計調査の業種別、企業規模別の数字によって、かなり詳しいことがわかります。

それによると、コロナによって最も大きな影響を受けているのは、業種別で見ると、宿泊業、飲食サービス業、生活サービス業、娯楽業です。しかも、その中で規模が小さい企業です。 

以下ではこれらのうち、宿泊業の状況がどうなっているかを見ることとします。

2020年7~9月期において、宿泊業における、資本金1000万円以上2000万円未満の企業(以下「零細企業」と呼びます)数は、4949です。2019年7~9月期には5064だったので、80ほどの企業が消滅したことになります(以下では、とくに断らない限り、2020年と2019年の7~9月期との比較を行うこととします)。

減少率でいうと、2.3%です。なお、この数字は、経済全体の企業数減少率(2.4%)とあまり変わりません。

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