他方、法人企業統計調査によると、2020年7~9月期の全産業の人員は、対前年同期比で102.7万人減です。
ところで、統計がカバーしている範囲は、労働力調査のほうが広くなっています。労働力調査で2020年5月の雇用者を見ると5920万人です。それに対して、法人企業統計調査の4~6月期の人員(金融業を含む全産業)は3528万人です。
このような違いを考慮すれば、法人企業統計調査における人員減は、休業者とほぼ一致します。
つまり、法人企業統計調査では、休業者を人員から除外しているのだと考えられます。
では、どの程度の範囲の休業者に対して、雇用調整助成金の支援がなされているでしょうか?
雇用調整助成金の支給決定件数は、8月末で累計約100万人、支給額が約1.2兆円でした。
上で見た数字(休業者が8月で216万人)であったことと勘案すると、8月時点では、休業者のほぼ半分が雇用調整助成金の対象となっていたと考えられます(注2)。
(注2)12月末には、支給決定件数が200万人まで増加しています。したがって、休業者のほとんどが雇用調整助成金の対象になったと考えられます。
他方、労働力調査では、8月の休業者216万人のうち、宿泊、飲食サービスで23万人でした。これを参考として、雇用調整助成金の5%が宿泊業向けだとすると、5万人程度に対して600億円程度の支援がなされたことになります。
正確なことはわからないとはいえ、法人企業統計調査での人員減のかなりは休業者となっており、その多くが、雇用調整助成金の対象になっているのであろうと推察されます。
支援は零細企業に集中が必要
宿泊業であっても、大企業の状況は、以上で述べた零細企業とはかなり違います。
売上高の減少率は42.8%であり、零細企業の79.7%とは差があります。
とくに注目すべきなのは、人員の減少率が7.1%にとどまっていることです。これが、零細企業との大きな違いです。
大企業も甚大な影響を受けているとはいえ、企業体力が強いこともあって、人員を大きく削減するまでには至っていないのです。
なお、大企業の売上高減少率が零細企業よりかなり低いのは、7月末から始まったGoToトラベルの影響である可能性があります。
つまり、GoToトラベルは、宿泊業の大企業の助けにはなったものの、零細企業の助けにはならなかったと解釈することができます。
今後も宿泊業に対する支援を継続するのであれば、大企業に有利なGoToトラベル型の需要喚起策ではなく、企業体力が弱い零細企業の利益減少を直接に補填する政策が必要です。
なお以上で考えたのは法人企業です。このほかに個人企業があることを忘れてはなりません。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら