雇用調整助成金のもともとの制度では、企業が拠出した保険料収入が財源だ。
コロナ前には、財源である雇用安定資金の残高が1.5兆円あった。しかし、特定措置によって申請数と支給額が想定以上に増加したため、資金は底をついた。
そこで財政資金を投入することとなり、昨年6月の2次補正で1.6兆円を、3次補正で1.4兆円を投入した。
財源問題を解決するには、保険料引き上げか財政資金の投入が必要だ。しかし、保険料の引き上げには財界が反対している。また財政資金の投入も難しい。
したがって、特例措置はおろか、本来の分の給付についても問題が生じる状態となっている。
休業者は昨年4~6月に約600万人まで増加したが、その後減って、12月末には202万人になった。しかし、今年1月以降は緊急事態宣言が再び発令された影響で、また増えている可能性がある。
昨年4~6月の600万人まではいかないが、12月末時点よりは増える可能性が高い。
こうした中で特例措置をやめれば、休業者が解雇される可能性が高い。
そこで、今年4月まで特例措置を延長したのだ。さらに、冒頭で述べたように、範囲を限定化して今年6月まで延長することとされた。
「いずれ戻る」の甘い期待で続いた「一時しのぎ」
これまでの経緯を見ると、「雇用問題に関する確たる方向づけなしに、手厚い保護で大量失業が顕在化するのを防いできただけだった」としか評価できない。
そして、その措置を、見通しなしに、ずるずると延長してきた。
その基本にあるのは、「いずれコロナは収束し、企業活動も正常に戻る。そうすれば休業者も減る。そして、雇用調整助成金の必要もなくなる」との期待だろう。
いまに至るまでその基本姿勢に変わりはない。しかし、実際にこの期待どおりになるだろうか?
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