欧米などが先行したワクチンの接種が2月17日に日本でも始まり、コロナの収束と経済活動の正常化への期待が膨らんできた。
しかし、問題は、雇用調整助成金に頼っている部門が正常に戻れるかどうかだ。それには、大きな疑問がある。
なぜなら、設備や店舗などの固定資産を減少させているセクターがあるからだ。
法人企業統計において全産業をみると、中小企業(資本金5000万円未満の企業)では、2019年から2020年にかけて固定資産が減少している。零細企業(資本金1000万円以上~2000万円未満)では、減少率は9.1%にもなる。
減少率がとくに著しいのは、次の部門だ(カッコ内は減少率)。
零細製造業(17.3%)、零細宿泊業(54.3%)、飲食業(資本金2000万円以上~5000万円未満)(36.2%)、生活サービス業(全規模)(24.2%)、零細娯楽業(62.0%)。
利益の激減によって利益準備金がマイナスになり、他方で金融機関からの借り入れを十分に増やすことができなかったので、バランスシートを維持するため固定資産を処分したのだと考えられる。
ところで、経済全体の需要が回復したときにそれに対応するためには、設備や店舗などの固定資産を元の水準に戻す必要がある。
削減した固定資産を元に戻せるか?
では、削減した固定資産を元に戻せるだろうか?
それは難しいと考えられる。
固定資産を増やすためには資金を調達しなければならないが、それが難しいからだ。
無理して人員だけ増やせば、労働量に対する資本量の比率となる「資本装備率」が低下して、賃金が下落する。したがって、休業者が元に戻ることは難しい。
他方で、特例措置がなくなれば、休業者が解雇され、コロナが収まった後で、失業率が高まる。
巨額の費用を投入して失業率を一時的に押さえ込んだものの、コロナが引き起こした基本的な問題は、何も解決されていなかったということになる。
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