雇用調整助成金の特例措置などの「出口戦略」を議論するに当たり、労働市場の現状(改善状況)を把握する必要がある。しかし、特例措置などの政策対応によって「失業率」には「歪み」が生じている。具体的には、失業率を算出する基礎統計である労働力調査は就業状態を「就業者(E)」「失業者(U)」「非労働力(N)」の3つに分けているが、政策対応によって「就業者(E)⇒失業者(U)」のフローが抑制されている。
今月の失業者の変化(ΔU)は、前月は就業者だったが今月は失業者となった人数(E⇒U)、前月失業者で今月も失業者だった人数(U⇒U)および前月は職探しをせず非労働力に計上されていたが、今月は職探しをしたために失業者となった人数(N⇒U)の合計となるが、E⇒Uが政策対応で抑制されていれば、ΔU自体が実態を表していないということになる。
「就職のしやすさ」は大幅に低下
そこで、足元の労働市場の状況を把握するためには政策対応の影響を直接受けない変化を見るべきであり、「前月失業者だったが今月就業者になった人数(U⇒E)」を確認することが有益だと考えられる。フローの人数データを用いて遷移確率を求める。「遷移確率」とは、前月にある状態Xだった人が今月ある状態Yになる割合であり、母集団の大きさによらない。
例えば、「失業者から就業者へ(U⇒E)」の遷移確率は「就職のしやすさ」を示す。実際にその遷移確率を見ると、大幅に低下していることがわかる。低下幅は2009年から2010年にかけてのリーマン・ショック時以上である。
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