脱炭素達成のカギを握る「寒すぎる家」の大問題 家が暖かくなれば「空き家問題」も解決に向かう

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山形県飯豊(いいで)町のエコハウス。同県の住宅制度「タテッカーナ」の最高グレードだ(写真:筆者提供)

「脱炭素」が世界の潮流になっている。ようやく日本でも菅義偉内閣が「2050年までの脱炭素」を掲げたとおり、国内でも今後さまざまな分野で大きな変革がやってきそうだ。

本当にできるのだろうか。具体的なロードマップとなると、実はかなりお寒い状態だ。もちろん影響力が大きいのはEV(電気自動車)だ。電気が水素などの再生可能エネルギーで作られていることが前提だが、ようやく日本の自動車メーカーも脱炭素に舵を切った。今後は、ほとんどの自動車が電気自動車になっていくことだろう。日本の自動車メーカーが世界の潮流に取り残されることなくEVの加速化にどんな手を打つのかに期待したい。

日本の住宅は時代遅れの基準さえクリアできず

一方、日本で脱炭素化が世界のなかで最も遅れている分野の1つが、建築だ。日本の全エネルギーの約3分の1が建築分野(一般用住宅と業務用)で消費されている。にもかかわらず「日本の住宅が『暖房しても寒い』根本的な理由」でも書いたとおり、住宅業界ではなんと1999年に決められた基準を「次世代省エネ基準」(2020年省エネ水準)として、いかにも近未来の基準のように使っているのだ。

しかも「次世代の基準」などと言うのは大間違いで、実態はもはや時代遅れ。表のように今最も厳しいドイツの基準と比べると、年間に使用する灯油タンクの量(床面積100平方メートルの家)換算ではなんと約7倍にもなる。さらに驚くのは、日本の住宅の大半がこの「時代遅れの新基準」さえクリアできていないということだ。

出典:各種資料をもとに筆者・「東洋経済オンライン編集部」作成

春を迎えるというのに、本当に寒すぎる話だが、それだけに、もはや「脱炭素」を実現する「ロードマップの1丁目1番地」に据えるべきなのが、建物の高断熱・高気密化による省エネルギーだと言えよう。

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