日本の住宅が「暖房しても寒い」根本的な理由 20年前の「断熱基準」さえいまだに達成できず

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山形市のHOUSE-M。日本の「省エネ基準」の住宅よりもはるかに性能が高い(筆者提供)

新型コロナウイルスの影響で家にいる時間が長くなってきている。家はこれからテレワークの場所として、より快適性を求められることになる。そういう家の性能の話をしよう。

昨今、「高断熱高気密住宅」という言葉もあるように、家はどんどん暖かくなっている。

だが、よく勉強せずに家を買った人から聞くのは、「ハウスメーカーの展示場に行って家を買った。でも思ったほど暖かくない」とか「最近はそういう性能のいい家が求められると聞いていたので、期待したがそれほどでもない」といった話だ。

日本の「断熱性能の基準」は「世界最低レベル」

日本の大手の住宅メーカーに対する信頼は比較的高い。「あの会社が言っているのに、そんなに暖かくないなんてとんでもない」という感じである。だが、実際、多くのハウスメーカーが「暖かいですよ」と言って建てる家は、そう暖かいわけではない。一方で、きちんと暖かい家を作ることができる工務店は増えてきている。つまり「暖かさのレベル」がいろいろと混在しているために、消費者は間違えやすいのだ。

例えば、展示場に行くときは、その家そのものではなく、裏へ回ってエアコンの室外機を見るべきだ。たいていは何台も室外機があるだろう。これまでの家の常識の範囲内である。そういう家は寒いといって差し支えない。一方、高断熱高気密住宅というのは、エアコン1台もしくは2台だけで快適な空間をつくることができる。家の性能が高いから、エアコンの台数を減らせるのだ。

どうしてこういうことが起こるのか。少し分析してみよう。

実は、残念ながら日本の家の断熱性能の基準は世界に比べると著しく低い。海外赴任から帰った日本人が、自国の質の低さにようやく気づき「日本の家の壁や窓がペラペラで、寒冷地でもないのに寒くて困った」という話をするが、まったくそうなのだ。すでに隣の韓国や中国も、今や地球温暖化防止のために基準を年々上げている。そのなかで断トツに低いのが、日本の断熱性能の基準、すなわち省エネルギー基準だ。

ではなぜ、日本はそれを放置しているのか。2020年に小規模の住宅であっても断熱が義務化されるはずだったが、見送られてしまった。一説によると、消費税導入などで景気が冷え込みそうなときに、基準を強化して不況になったら大変だという思いもあった、と聞いている。住宅の性能を上げるチャンスだったのに、最初の一歩が延期されてしまった。いずれにしても、それにはそれなりの理由があるようだ。

この円グラフを見ていただきたい。義務化しようとしていた省エネ基準(1999(平成11)年基準)の建物は全体の5%しかない。これを一気に義務化すると、中小の工務店がついてくることができないから延期する、というのが、断熱を強化する省エネ基準にしたくない側の理由の1つだ。

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