日本の住宅が「暖房しても寒い」根本的な理由 20年前の「断熱基準」さえいまだに達成できず

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しかし、そもそも20年以上昔の1999年に定められた基準が「次世代省エネ基準」として、いまだに住宅業界で現役であること自体がおかしいではないか。しかも、この古い省エネ基準で作った家を「高断熱住宅」にしようという流れにもなっている。それほど優秀でもない住宅を、高断熱高気密住宅と呼んでいるのである。

確かに、日本の上位5%の高性能である。だが、この住宅では今まで建てられてきた住宅の体感とさほど大きく変わらない。でも営業マンは、このレベルを高断熱であると言い、消費者は「そこまで言うなら、そんなものかな」と納得させられてしまうのである。

独由来の高性能住宅と日本の省エネ住宅の著しい「格差」

このように、日本では低い断熱性の基準が放置されている。その一方で、世界基準を見据えたり、あるいは寒冷地から始まった断熱性能のしっかりした住宅が、静かなブームにもなっている。これはある意味で、工務店業界での流行だ。これから着工件数が減ると見られる建設業界において、「差別化して、特徴のある家づくりをしよう」という危機感を持った工務店が意欲的に勉強会を開いたりして、高性能住宅を作り始めているのである。

【2020年10月5日20時30分追記】初出時、図表の数字に誤りがありましたので修正しました。

上の比較表を見てほしい。「パッシブハウス基準」とは、ドイツの研究所が規定する、世界で最も厳しい省エネ基準である。同国のファイスト博士が、建物の換気の際に最低限の暖房を施すことで、全館暖房ができる性能を求めて決めた基準だ。100平方メートルの家で見ると、年間に消費する18リットル灯油タンクは8.3本。一方、前出の日本の2020年省エネ基準(1999年基準)の住宅では55.6本も必要だから、燃費にして約7倍の開きがある。パッシブハウス基準はそれほどの省エネ性能を住宅に求めるのだ。

一方「Q値1.0ハウス」は、断熱性能の高さを数値化した熱損失係数(Q値)が「1.0」になるように目指す基準である。「Q1.0(キューワン)」を実現すると超省エネの高断熱住宅とされる。日本の「一般社団法人新木造住宅技術研究協議会(新住協)」が設けている基準である。

また「HEAT20」は「20年先を見据えた住宅の高断熱住宅研究会」というところが出している基準である。2つのうち性能の高い「G2レベル」の場合、それで東京で住宅を建てたとして、北海道の住宅における高断熱高気密の省エネ基準くらいの性能になる。「G1レベル」は2020年省エネ基準とG2レベルの中間だ。

筆者が考える「高断熱高気密住宅」は、このG2レベルを超えたい。G2レベル以上になると、パッシブハウス基準には及ばないが、今までの家とはまったく違う暖かさを感じることができるからだ。このレベルになると、普通の家なら、各階1台のエアコンで制御可能だ。具体的に言うと、冬、寝る前に暖房を切っても、翌朝13度以下にはならない。

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