人口減少時代の日本のビジネスはどうなっていくのであろうか。この連載らしく、今回も木や建築物のことからいろいろ考えてみたい。
日本の森林が「立派なビジネス」になるためには?
すでに日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少しており、人手不足はいよいよ深刻だ。一方で、従来型のビジネスで大きな設備投資をしても先の需要はあまり見込めない。単純に消費者も減っていく。つまり、モノを作るときはできるだけ投資を少なくして、効率よく作るかが問われる。また使うときはランニングコストのことが気になる。一般に、「建物が建っている間のトータルな維持管理費は、建設費の5倍」と言われている。 総務省によると日本には約6000万戸の住宅があるが、約820万戸が空き家である。
ここで、空き家対策を行っている国としてよく手本とされるのがイタリアだ。同国では都市部の人口集中などで、1960年代に農村が荒廃した。だが1980年代に入ってスローフード運動やアグリツーリズムなどをきっかけに、村の空き家を使った「アルベルゴディフーゾ」という分散型のホテルが増え、人口の流出が止まった。それらのホテルは大きな改築などなく、ほとんど昔のままの状態で、その雰囲気を楽しむものである。つまり、田舎の生活が都市居住者の癒しとなるわけだが、これは経済の理にも適っている。要はそこにあるものをうまく転用(コンバージョン)しているわけである。
一方、日本でも、以前に比べて古民家を改築するなどのリノベーションが増えてきている。これも新築に比べて、投資を抑えて新しい価値を作り出すという点で良い例である。空き家などは「今そこにあるもの」を使っているのである。
このように、そこにあるものをうまく使うという点で見渡すと、「まだまだ使えるいろいろなもの」が見えてくる。こうした視点で日本を見たとき、資源として持っていながらうまく使えていない代表選手は「森林」だと思う。実際、日本は国土の3分の2が森林だ。戦後に植林された森林も、すでに50年以上が経っているものが多くなり、伐適期を迎えている。これをうまく利用しない手はない。入り口があれば出口もなくてはいけない。空き家は空き家としてうまく使いつつ、森林を使うということに関して、住宅という出口をきちんと用意すれば、今よりもずっと有効に使うことができる。
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