筆者は、そのカギは住宅の温熱性能(どれだけ断熱できるか)になると考えている。温熱性能が良い、すなわち暖かい家である。そのときの主な担い手は大手の住宅メーカーではなく、むしろ地域の工務店である。実は高い温熱性能の家を作る技術は、近年特に進んでいる。これらは建材そのものの進歩に加え、技術によってさまざま点がシミュレーションできるようになったことが大きい。
建材の進歩は、今までエネルギーが事実上「だだ漏れ状態」に等しいといわざるをえないアルミサッシから樹脂製や木製のサッシに、窓ガラスがシングルガラスやペアガラスからトリプルガラスに変わってきたことが大きい。それまでは高性能なサッシは国産ではなかったのだ。温熱性能そのものに関しても、2020年をメドにある程度のレベルまで引き上げるよう義務化される見通しだ。もし義務化されてもそのレベル自体は先進国の水準と比べても決して高くない。だが何しろ断熱された建物の数量が少ないので、仕方ないレベルとも言える。いずれにしても、改善された建材でできた家は、従来の家に比べて快適でかつエネルギーの使用量も少ない。
断熱の技術には誤解があまりにも多すぎる
前回多くの反響があった「『教室のエアコン設置論』よりも重要なこと」でも書いたが、日本には、家が寒いことによって疾患が起こりやすく、年間1万7000人もの人がヒートショックで亡くなるという。まさに、日本の住宅は非健康的といわざるをえない。食事や栄養学、スポーツなどの話ならみんな飛びつくのに、こと住環境に関しては無頓着なのは、ものすごくアンバランスに思える。
では、実際にどのくらいの断熱をしたらいいか。断熱の効果については、なにしろ実務経験者がかなり少ないので、とんでもない印象論が広く流布している。これも前回書いたが、たとえば「高断熱高気密」というだけで、「湿気の多い日本では適していない!」と言われる始末である。
「そういうときの、そういう人の頭」にあるのは2000年ごろに輸入された 「R2000」という北欧系の住宅の仕様だ。確かにこれは窓が小さく、通気性が悪そうだ。筆者もこれは日本の風土に合わないと思う。実は最近の住宅メーカーが導入しているQ(あるいはua値)と言われる性能を表す数字を競争する場合も、残念だがこれとさほど変わらない印象の家になる。
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