沼津市の「泊まれる公園」は何がスゴイのか 欧州は森や公園を「使い倒す」のが当たり前だ
森林先進国・フィンランドの「自然享受権」とは?
――日本は国土全体の約66%が森林で、そのうち約45%、1000万ヘクタールは国または地方公共団体の所有地です。そこで今回は森林や公園をテーマに、環境を生かしながら新たな公的不動産活用を行う事例を見ていきたいと思います。
最初に参考にするのは、森林大国・フィンランドの「エブリマンズ・ライト」=自然享受権に基づいた取り組みです。北欧では古くから、「土地の所有者に損害を与えない限り、すべての人はその土地に立ち入ったり、自然を享受する権利が認められている」という考え方が浸透しています。
実は、フィンランドではこれを法律で明確に定めました。享受権の中には、通行権、滞在権、自然環境利用権、さらには果実採取権も含まれ、土地の所有者に対価を支払わずに、例えば野生の果実やキノコ類の採取をすることだって可能です。それも、個人が自宅用に利用するだけでなく、ビジネスとして活用することも許されています。海外からの旅行者に対しても、同じ権利が認められているのも特長です。
林千晶(以下、林):実は2015年、岐阜の飛騨で林業の会社を立ち上げる際に、まさにフィンランドの事例をベンチマークにしようと思い、視察に行ったんです。そこでエブリマンズ・ライトの実態も見てきたんですが、その根本思想は「土地の所有と利用を分ける」というものでした。森の中はみんなのもので、そこに泊まってもいいし、釣りをしてもいいし、キャンプしてもいい。自生している果実を採ってジャムを作っている大手企業もあるくらい。個人だけでなく、ビジネスをしてもいいというのがまたすごいなと。
馬場正尊(以下、馬場):森はみんなのもの、という哲学が社会全体で共有されているんでしょうね。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら