沼津市の「泊まれる公園」は何がスゴイのか 欧州は森や公園を「使い倒す」のが当たり前だ
――次にインドネシアのバリ島の事例を紹介します。バリ島中央部の森の中にある「グリーンスクール」です。自然環境の中で、大人や子どもに向けた教育プログラムを提供する施設で、「未来のリーダー養成校」とも呼ばれています。竹を用いた空間を使って提供される独自の教育プログラムは高く評価され、世界各地から参加者が集まっています。
林:世界を舞台に活躍している、ある人からは「え、チアキはまだ行ったことがないの? 1回は子どもを連れて行ってみたほうがいい」と言われたことがある。グリーンスクールは、本当にずっと行ってみたいと思っているところです。
いろいろなアイデアを持っているメンバーが集まって、国連が提唱している「サステイナブル・ディベロップメント・ゴールズ(持続可能な開発目標)」のようなことを話し合うのは、やっぱりこういう場所だと思う。20年後、100年後といった、規模の時間を超えたビジョンを作るのならこんな場所がいいですよね。会議室では絶対にいいアイデアは生まれないと思う。
野尻:こういう場所で合宿したいね。でも、バリじゃなくて、岐阜だっていいわけでしょう?
林:そう。要は普通じゃない環境であればいい。向こうが「森の中の竹の教室」でやるんだったら、こっちは温泉がボコボコ湧いている横でやってもいいし、川の上だっていいし。
野尻:だったら日本にもいっぱいあるよね。
林:だけど、そういう「非日常な場所」って、だいたい国の所有地になっているんです。で、みんなが使えない場所になっているんですよね。
3週間40万円の建築キャンプが一瞬で満員に
――国内の森林の活用事例としては、林さんが岐阜で手掛けている官民共同事業体の「飛騨の森でクマは踊る」(通称:ヒダクマ)があります。このヒダクマについて、ぜひ説明を。
林:私のような素人にしてみれば、森って憧れの場所なんですね。歩いたり、遊んだり、楽しいことがいっぱいある森なのに、林業の観点だけで見ると現状では価値がほとんどない。そこをなんとか転換したいと思ったんですね。
飛騨は、釘などを使わずに木材と木材をぴったりつなぐ「組木」や木造建築が有名な土地です。その伝統的な技術と新しいデジタル・ファブリケーション(製造)を組み合わせて多面的に展開していけば、もしかしたら飛騨の森をグンと活性化できるかもしれない。そう考えて、2年前にこの会社を、飛騨とトビムシと共同で作ったんです。
で、事業の1つとして、さっきのバリのグリーンスクールみたいに毎年、日本のすばらしい木造建築を学べる建築キャンプを開催しているんです。3週間の日程で費用は40万円。参加者を募集すると、世界各地の建築科の学生たちが応募してきて、定員がすぐいっぱいになっちゃう。
野尻:講師は誰がやっているの?
林:地元の大工さんや木工職人の方です。デジタル・ファブリケーションについては慶應義塾大学の先生にきていただいています。
馬場:いま建築を学んでいる学生は、木のリアルを学んでいないんです。西洋の建築技法を叩(たた)きこまれるから、木造建築をほとんど知らない。だから参加する学生は、すごく新鮮に感じていると思いますよ。
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