なぜ日本の住宅は「本物」の木を使わないのか 「木のイノベーション」が日本の地方を救う

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「森林」は有用なバイオマスエネルギーとして取り上げられることが多い。だが、エネルギーだけではなく、製材にして、より高い値段で売り、高付加価値で使うことが、森林や森林ビジネスの持続可能性にとって極めて重要だ。もし安く売ってしまうと、森林に再投資できない。そうなると持続可能な開発ではなくなってしまう。だから、「森林」はどうやって、製材にして上手に使うか、考える必要がある。

「ホンモノの木」を使わなくなってしまったニッポン

あまりよく知られていないのだが、実は住宅メーカーの建てる建物のほとんどは、外国産の木を原料とした集成材(複数の木材を接着剤で再構成した木材のこと。その反対は丸太から切り出した無垢材)でできている。まったく「木が狂わない」からだ。木が狂う、あるいは割れるなどという顧客のクレームへの対応で、集成材がほとんどになってしまった。

マンション業界も似たような話がある。同じように顧客からのクレームに対応していった結果としてドア枠などが、木というよりも「紙で固めた素材」になっているのだ。一見、木に見えるが実際は紙で固めた素材に木目のついたプラスチックのシートが貼られているわけだ。だが竣工時、あるいは購入時こそかなり綺麗だが、すり減ってくると白いシートが見えてくる。最初が一番良く、あとはどんどん劣化するのだ。一方、本当の木はどうか。確かに使えばすぐ傷がつくかもしれない。だが、だんだんと味が出てくる。時間とともに変わってくるのだ。

では、日本の本来の木造の家はどうしたら、「森林」から出たホンモノの木でつくられるようになるのか。冒頭で「住宅という出口を考える必要がある」といったのはこのことである。もう少し詳しく見ていこう。

「売れる木の家」を作ってたくさん売ればいいのだろうか。よく木の山地の森林組合が木材の利用促進を考えてモデルハウスを作ることがある。理解はできるのだが、大抵は日本の伝統工法で作るか、 ログハウスのようなものを考えてしまう。つまり、マーケティングを考えるとまさに売り手にとって売りたいものをつくるわけだが、これは残念ながら、消費者にとっては迷惑なだけである。

一見難しいかもしれないが、大きな付加価値をつけて、売れるようにしなくてはいけない。ではどうすればいいのか。

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