なぜ日本の住宅は「本物」の木を使わないのか 「木のイノベーション」が日本の地方を救う

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では、誰がこれからの木造高断熱住宅の担い手になるのか。

答えは明快だ。一条工務店のような、地域に根を張る有力工務店であると私は思う。温熱のシミュレーションソフトは10万円程度で手に入る。また温熱の専門知識もだいぶ広まってきている。付加断熱への対応の手間はかかるし、それが全体の単価を引き上げるが、顧客満足度からするとそれは大きな差ではない。 実際、そういった中小の工務店が確実に成長してきているし、建材メーカーも、エコハウスの商材に積極的に取り組みつつある。

小回りのきく地域の工務店が活躍できる余地がある

では、なぜ地域の工務店が有力な担い手になることができるのか。それは危機感の裏返しでもあろう。人口が減り、地方ではすでに大きく仕事が減ってきている。その生き残り策は、住宅の性能向上が最も有効なのである。この分野は、大手の住宅メーカーは一部を除いてまだ対応しきれない。

その隙になんとか大手住宅メーカーが対応できないレベルまで行ってしまおうという作戦である。実際、技術的には比較的簡単なソフトで温熱計算ができるので、そこでのシミュレーションのフィードバックを重ねることで技術が磨かれ、大手が追いつけない水準にまで達するのだと推測する。

一方で、住宅を考える場合、実は大事なプレーヤーである建築の設計事務所の対応は遅い。単純に「断熱に対するアレルギー」があるからなのだが、年間に経験する棟数が少ないので、トライアンドエラーができないという理由もあるかもしれない。

こうした高断熱の住宅を、なんとか日本にある木材で建てられないものだろうか。以前、ある工務店の親方に「無垢材で家を建てて、柱が反ったり割れたりしてクレームになって困った」という話をされた。一方、ある 林業家は「木はもともと生き物だから、反ったり、割れたりは当たり前だ」と言う。

どちらが正しいのか。実際はどちらも真実である。だが本来なら無垢材は、木が反ったり割れたりしても十分な強度を見ているので、何の問題もないはずである。これは、構造というよりも、どちらかというと消費者の意識の問題ではないか。

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