脱炭素達成のカギを握る「寒すぎる家」の大問題

家が暖かくなれば「空き家問題」も解決に向かう

前述のように、この制度は建物の断熱に客観的な指標があるため、プランに応じて選択できるだけでなく、一般の人々の断熱に対する認識も新たにできる。また県産の木材を一定以上使用することも条件として含まれているため、地元の工務店が多く申請することで地域の産業振興にも役立つ。「設計適合証(住宅)」の実績は、2018年度29件、2019年度48件、2020年度も昨年10月末時点で57件となっていて、徐々に広がりをみせている。

ただ、県としての予算規模が小さく、この制度を利用する工務店も待ち構えていて、すぐに予算の上限に達してしまう。有効なのだが枠の拡大が課題だと言えるだろう。

一方、山形では県だけではなく、山形市の動きも活発化している。やはり県と同じように健康住宅の後押しを検討中だ。今後、県と市の両方からの助成金がつけば、高性能住宅を建てる人にとってのメリットはより大きくなるので、この流れが加速化することが期待できる。

鳥取県は「健康省エネ住宅」を知事が積極アピール

もう1つは、鳥取県の「とっとり健康省エネ住宅『NE-ST』だ。やはり山形県と同様「HEAT20」のG1~G3に呼応する「T-G1」「T-G2」「T-G3」の3つのグレードを設定。国の基準を超え、ヨーロッパの先進地域との比較もできるような表になっている。

鳥取県も自治体独自の健康省エネ住宅を推進(出典:鳥取県HPより)

こちらは今年から申請が始まったばかりだが、「T-G1」「T-G2」「T-G3」の申請状況はそれぞれ19、20、2戸の申し込みがあった。しかも、このプロジェクトは平井伸治鳥取県知事が積極的に後押しをしているため、随時受け付けをしていることが特徴だ。同時に工務店や設計事務所に対する技術講習会など、県の建築技術を底上げする啓蒙活動も積極的に行っている。

これら2つの県の施策は補助金を使っても、それ以上に効果が出るレバレッジの利いた優れた政策と言える。地方自治体で国の基準を超えて義務化することは難しくても、このように助成を前提にすることで、国を超えた基準に誘導することが可能になる。また「松竹梅」と並べることで、梅よりは竹、竹よりは松、とより高いレベルに引き上げる効果もある。

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