50代は「住宅ローン完済」でも老後破綻の危機 マイホームは恐ろしい「金食い虫」になる

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定年前のローン完済を目指し、ようやく自分のものになったマイホーム。でも老後は長い。これからもマイホームには金がかかるという落とし穴を見逃していないか? (写真:USSIE/PIXTA)

60歳の定年までを目標に、住宅ローンの返済に励んでいる人も多いかと思います。しかし住宅ローン完済は1つの目安でしかありません。ローンという負債がなくなったとしても、マイホームが金食い虫になるとしたら安泰とはいえません。

私はファイナンシャルプランナーとして活動しており、主に50代会社員の方から相談をいただいています。昨年、「老後2000万円問題」が話題になりましたが、定年後の家計についての相談も増えています。その中には「住宅ローン完済後もマイホームが負債になっている」ケースがいくつもありますが、最悪の場合は老後破綻につながるということをお伝えしたいと思います。

「50代で計画的繰り上げ返済完了」の「落とし穴」

住宅ローン返済中の50代には、「持ち家は資産」という意識で購入した人も多いかと思います。その親世代が高度成長期に恩恵を受けており、今の50代は成長過程でそうした親の「家」についての考え方の影響を受けているかもしれません。また、今の50代が家を購入した20〜30年前は人口減少や空き家の問題も話題には上っていませんでしたし、ネットでの情報収集も当たり前でなかったので、マイホーム選びに際してさほど精査することもなかったでしょう。

先日、相談に来られたAさんは56歳、金融機関にお勤めです。勤務先は50歳前後が初発の役員年次で、役員になれない場合は関係会社などへ出ていくことになるそうです。その場合、当然年収が下がるので、Aさんは住宅ローンの返済にあたり、「50代での年収3〜4割減」を想定のうえ計画的に繰り上げ返済をしてきました。

そして、私のところに相談に来られたときには「ようやく住宅ローンを完済しました」と、明るい表情でした。「2人の子どもを中学から大学まで私立に通わせた」とのことですから、教育費の負担も重なって繰り上げ返済は大変だったと思います。奥様もパートに出て、夫婦で協力して計画を実行することができたそうです。

Aさんは60歳以降も継続雇用となり、1年ごとの契約更新となるのですが、できれば早めにリタイアして夫婦で趣味の旅行を楽しみたいとのこと。そこで「キャッシュフロー表を作成して、そのような暮らし方が可能か、みてみましょう」ということになりました。

キャッシュフロー表では「今」を起点に、数年後や数十年後の貯蓄残高の変化を一目で確認できるように表やグラフにします。子どもたちは社会人になったことだし、夫婦2人でちょっとした旅行を楽しんだりするくらいできるだろうと、Aさんは考えていましたが……。

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