50代は「住宅ローン完済」でも老後破綻の危機 マイホームは恐ろしい「金食い虫」になる

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Bさんはここを終(つい)の住処(すみか)にすべくリフォームをはじめ維持を行うつもりですが、これには注意が必要です。

例えば、足腰が弱くなって階段の上り下りが難しくなった、親の介護で故郷に戻らざるをえなくなった、孫の世話をしてほしいから近くに越してきてと子どもに頼まれた……などなど、人生にはあらゆる想定外が潜んでいます。ローン完済した、そのマイホームに住み続けられるという保証は、どこにもありません。定年後、マイホームに高額な維持費をかける前に、立ち止まって考えていただきたいところです。

保有コストと資産価値を見積もり、次善策も立てておく

つまり、AさんとBさんに共通することですが、まずはマイホームをこのまま持ち続けた場合のコストを見積もり、次の一手を見極めておく必要があります。もちろん、今後も働き続けて収入を増やすことも大きな一手になりますが、コストが見合わない場合には売却するか賃貸に出すかなども考えなければならないでしょう。

具体的には、近隣の同様物件の相場を確認しておくことや、無料査定を依頼してみるのもいいかもしれません。客観的に自分の持ち家の資産価値が現状どのくらいで将来どうなるだろうか見積もっておく必要があります。民間の調査では、2033年の空き家率は30.2%に上昇するとの予測もあり、エリアによっては売れない、貸せない可能性も出てくるでしょう。まさかローン完済後のマイホームが負債になるとは想像したくもありませんが、想定しておけば対策も可能です。

例えば、マンションをダウンサイジングして毎月の固定費を下げる、維持費を最低限にして住み続ける、高齢者用の施設に入居する、地方に移住する、などが挙げられます。「現状路線」のままで進みたいのであれば、夫婦でなるべく長く働くことも有効ですから、ぜひ夫婦で力を合わせて乗り切っていきたいものです。

三原 由紀 プレ定年専門ファイナンシャルプランナー

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みはら ゆき / Yuki Mihara

バブル期にOLを経験、子育て中で外に出られないときに同じアパートに住むママ友3人で株のネットトレードを始め、夫にナイショのままコッソリ1000万円以上の利益を達成。子供の小学校入学を機に保険代理店でパート開始し、FP資格を取得。「無知はリスク(知らない=損をしていることもわからない)」を実感して、自らの家計を再生。40代・50代に向け、プレ定年夫婦専門FPとして「お金で揉めない夫婦関係を構築」「50代からでも間に合う家計立て直し」を提案・実行支援する。保険や金融商品を売らない独立系FPとして活動中。「確定拠出年金相談ねっと」認定FP。三原由紀公式サイト

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