50代は「住宅ローン完済」でも老後破綻の危機 マイホームは恐ろしい「金食い虫」になる
Aさんのキャッシュフロー表で、毎月の固定費のうち「住居費」の高さが気になったのです。
住宅ローンを完済した持ち家は千葉県内のベイエリアのマンションですが、「借地権付きのために、毎月地代の負担があります」とAさん。管理費、地代、修繕積立等、駐車場代を合わせると6万円を超えています。Aさんがこのマンションの購入を決めた理由は「借地権分譲が気になったものの、更新可能でそのまま住み続けることができること、そして何よりも所有権分譲より安く購入できることに魅力を感じたから」でした。
確かに、Aさんが言うように借地権付きのマンションにはメリットがありますが、一方でランニングコストが高くなるというデメリットもあります。定年後の家計には、それが毎月かかる固定費として響いてきます。Aさんが60歳以後に雇用継続で働く場合の月収は20万円ほど。住居費が占める割合は3割に跳ね上がります。
キャッシュフロー表が警告する老後破綻のリスク
Aさん夫婦は同い年で65歳以降の公的年金は月25万円ですが、生命保険文化センターの調査によると「ゆとりある老後生活費は月36万1000円」とのことですから、Aさんの家計は約11万円の不足です。しかも、同調査での住居費は約1万8000円と、Aさんの住居費6万円と比べ3分の1以下です。教育費と繰り上げ返済にお金を注ぎ込んだために貯蓄は少なくなり、老後はAさんの退職金の2500万円が頼り。何とかなると思っていたAさんですが、仮に60歳でリタイアした場合、公的年金を受け取る頃には退職金がほぼなくなります。それを示すキャッシュフロー表を目の当たりにして、Aさんはショックを隠し切れませんでした。
もう1つ、別のケースについてお話しします。
昨年定年退職をした、千葉郊外の一戸建てに住むBさんから老後の生活設計について相談したいと連絡をいただきました。お会いしたときに印象的だったのが、ショールームに寄ってきたとリフォーム関連のパンフレットを抱えていた姿です。
聞けば、「退職金の2800万円を受け取ったので、この機会にリフォームをしようと妻と話し合っている」とのこと。Bさんは60歳で定年を迎えてから雇用継続制度は利用せずに、失業給付を受けながら就職活動中でした。契約社員で就職先が決まりそうになったときに、コロナウイルスの影響で内定が白紙になってしまったそうです。
そんなBさんのキャッシュフロー表を作成するに当たって、気になったのは、前述のAさんと同様に「住居費」です。リフォームを含めた今後の住居費が高くなりそうだったのです。
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