何でも入手できる米国「精子バンク」の驚く値段 家族法研究者が考える「選択的シングルマザー」

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周囲には家すら見当たらない。本当にこんなところに不妊治療クリニックがあるのだろうか。若干の不安に駆られながら、スマートフォンの地図情報を頼りに坂をのぼる。坂の中腹で、突然、広大な平屋建ての白い建物が見えてきたときには心からほっとした。白い壁に銀色で大きく描かれた「ボストンIVF」の文字を、遠くからでも読み取ることができたからだ。

建物も広大だけれど、駐車場も広い。そこに数台の車がまばらに停まる。学校の春休みを利用してきたのだけれど、平日は不妊治療クリニックも混んではいないようだ。

少し話は逸れるが、日本の不妊治療クリニックは街中にあるところが多い。ターミナル駅直結のクリニックは、通うための利便性をうたう。だが、車社会のアメリカでは、少し事情が異なるのかもしれない。車がなければ、このクリニックに通うことは難しいだろう。

少し緊張しながら、クリニックの正面玄関から入る。受付の警備員のような男性に、カウンセラーの方とアポイントメントがあることを伝える。すぐに愛想のよい、ベテラン風の女性が出迎えにきてくれた。「ロンダよ」と彼女は名乗る。

アメリカでも不妊の悩みは深刻

私は不思議に思っていたことをロンダに尋ねた。日本の不妊治療クリニックにあるような大きな待合室が、そこにはなかったのだ。みんなどうやって診察を待つのだろう?

「ああ、そのことね」と、ロンダは笑って、廊下に並ぶ扉のひとつを開ける。狭い個室にはソファと椅子が置かれている。

「待合室は個室にしているの。不妊治療クリニックには、ときとして子どもを連れてくる人がいるし、大きなお腹を抱えて妊娠の報告をしにくる人もいるわ。一方で、長年、不妊治療を続けてきた人のなかには、妊婦さんの姿を見たとたんに涙が止まらなくなる人もいるの。だから待合室は、ほかの人と会わないで済むように個室にしているのよ」

彼女のにこやかな説明を聞きながら、あっけらかんとして見えるアメリカの空の下でも、不妊というのは深刻な悩みであることに気づく。

ロンダは、私を白一色の部屋に招き入れる。ここがカウンセリングルームだという。そこで私は治療に関する説明を受ける。治療を開始する場合には、最初にカウンセリング予約をする必要があるとのこと。そして、精子提供を受ける場合には、それぞれの患者さんに合わせたテイラーメイドの治療となるため、標準治療というものがないと告げられる。そのため、医師とのカウンセリングでその後の治療方針を決めるのが最初のステップとなる。これが350ドル。

次に、生理周期3日目に血液検査も必要になる。この検査によって、生殖機能のレベルがわかるそうである。これが300ドル。

続いて、X線で子宮や卵管の様子を検査する。これが1000ドル。さらに、精子ドナーを使用するならば、ソーシャル・ワーカーによるカウンセリングも必要になるという。アメリカの医療費は、日本と比べてずいぶんと高い。日本だと血液検査は8,000円程度だし、超音波検査は3,000円くらいのところが多いのではないか。

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