バス代もなく面接に行けない状態
「もう手持ちのおカネが1892円しかありません。これからどうなるんだろう……みたいな不安だらけ」
関東地方の田舎町、最寄り駅までバスで30分以上かかった。晴天の下、癒やされる田園風景が広がる。しかし、待ち合わせ場所にやってきた佐藤雅美さん(仮名、48歳)の表情は、どんよりと曇る。表情が緩むことはなかった。バツ2のシングルマザー、26歳の知的障害者の息子と2人暮らし。息子は療育手帳Aをもつ重度障害者である。
「2カ月前まで派遣で介護職をしていました。介助でカラダを壊したのと、職場の環境がヒドかったので辞めました。先月から収入は息子の障害年金だけになってしまって、まったくおカネがなくなって、家にある漫画とかゲームを売った。何千円かになって、なんとか10日間くらいはしのげました。でも、もう売れるものは何もないです。バス代もないので、次の息子の障害年金が入るまで、アルバイトの面接にも行けない状態です」
車は車検代が支払えず、使えない。最寄りの駅にすら行けない状態だ。夕方には息子がデイサービスから帰る。お迎え時間には、必ず立ち会わなければならない。息子は食事や入浴、着替えに見守りが必要だ。1人で留守番はできない。在宅介護が始まってから自由はなくなり、働く時間も限られるようになった。
2人暮らしが始まったのは、2年前。息子は小学校2年生のときに在宅は無理と施設に預け、17年間は施設で暮らした。24歳で卒園。受け入れてくれる施設は見つからず、在宅介護が始まった。つねに見守りが必要な状態で、働けるのはデイサービスに行っている時間だけ。事情を話すとコンビニやスーパーには断られ、介護はやっと見つかった仕事だった。
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