音声教育をメインに
安河内:なるほど……。で、どうすればいいのでしょうか。中学生にはどう勉強させればいいのか。
水野:今も一応、リスニングはありますけど、私としては音声教育を除いた外国語ほどつまらない勉強はないと思います。
安河内:つまり、水野先生は前倒しはしなくても大丈夫だ、と。その代わりに中学生の時点から音声を取り入れた英語の学習をすれば、それで十分だということですよね。
水野:十分だという言い切りは……。でも、まずは中学にある明らかな問題点で、改善できるかもしれないことに着手しないで、小学校に前倒しをするということに反対しているのです。
安河内:中学校の問題点に先に着手するべきだ、と。
水野:今の教科書も20年前から比べると、さほど文法中心とも言えない、かなりコミュニカティブ(意思疎通に役立つ)ですよ。それでも英語はできるようになっていないということは、結局、コミュニカティブにしてもできるようにはなっていないという証拠でもあるわけです。だから、改善に着手する方法として、コミュニカティブをメインにするよりも、音声教育をメインにしたほうが効率がいいと思います。
導入の仕方も、文法を教えるのは日本人の先生、音声は外国人の先生、みたいな極論にしない。
安河内:確かにそうですね。
水野:そうじゃなくて、日本人の先生が教えられる音声教育の方法を教えるべきで、そこにカタカナを活用して、発音記号も利用して、日本語と英語の音声のギャップを埋めるポイントをいくつかあぶり出して、それらをシステム化して教えるほうが、コミュニカティブなんかやるよりもずっと効果があると思います。
ちゃんと聞こえるようになるし、音の違いもわかるようになります。音声の仕組みを学ぶことで、知的好奇心にも訴えると思いますよ。これなら勉強の方法があるのです。こういうことを踏まえたうえで、定期的に外国人講師などが来るというのならわかりますが。日本人ならではの英語学習法というのがあっていいと思うのです。
安河内:ん~。具体的な話が出てきましたねぇ。そうですね、何かようやくたどり着いた気がします。私たち何時間しゃべってますか。ようやく対立しない点を見つけられた気がします。
私も水野先生がおっしゃったこととまったく同じなのですが、小学生であろうと中学生であろうと高校生であろうと大学生であろうと、大人であろうと、ただ言葉でキャッチボールをしながら自然に覚えていくのなんて、絶対に無理だと思います。EFL(外国語としての英語)環境の中では無理ですよ。
水野:私もそう思います。
安河内:だから、きちっと型を教えて、それを模範の音声を使った訓練によって自動化しつつ、コミュニケーションの練習を適宜、入れていくべきなのです。このベースがない中で、「はい、コミュニケーションしなさい」ってブロークン・イングリッシュでめちゃくちゃにしゃべっていても、ある程度まではいくのですけど、そこから先にはいけないんですよね。その部分では私は水野先生とまったく同意見です。これはぜひ強調しておきますね。
ただ、そうして効率的なやり方を導入したとしても、身に付けるには時間がかかりますから、英語はほかの科目よりも授業時間は多いのですが、中学3年間を通じて、はたしてそれで足りるかというと……。
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