われわれ自身の話をしましょうか
安河内:水野先生は東大やオックスフォード大で勉強して、今は英語を教える仕事をされています。いわゆる英語の達人です。それで英語は中学からやればいいと言われていますが、ご自身は何歳くらいからどのようにして英語を学び始めたのですか?
水野:私は小中高はすべて公立の学校に通いましたから、特別な英語教育を受けたわけではありません。帰国子女でもありませんし、オックスフォード大学に留学したのは、大学の教員になった後です。特に英会話学校にも通っていたわけでもありません。ですから、独学の部分が多かったと思うのですが、私は、英語の達人では全然なくて、自分に必要な英語力を、ある程度、身に付けた人間ということです。
私の場合、難しい論文を全部読めるとか、すらすら書けるとか、海外の高校生向けのドラマを見て全部わかるとか、そういうことではありません。ただ、必要なものに絞っているのです。
では、どうして英語の発音なり、リスニングがある程度、できたかというと、これは向き不向きだと思っています。今の日本の英語教育では、音声教育はやっていないでしょ。英語ができる人というのは、なんとなく耳がいいとか、たまたま勘がいいとかで、できるようになっていますが、教えてはいないですよね。私の場合はピアノをやっていたので、耳が発達していたのかもしれません。それで英語ができるようになったのかもしれないですね。
私は、父親が海外で仕事をしていた経験もあって、身の回りに英語の本があったりして、英語というものにあこがれがあったんですね。だから、私も中学で英語の授業が始まるのはすごく楽しみにしていたんですよ。
でも、実際に授業が始まってみると、それまで私が聞いていたテレビやラジオで流れてくるような英語ではなかった。ですから、私の場合、中学1年生の1学期に、学校でやる英語は試験用にやろうと割り切ったのです。それで、聞いたり話したりする英語はどうやら教えてもらえないようなので、自分でやろうと決めました。
安河内:自分で? 実際にやったのですか? そこが知りたいですね!
水野:NHKのラジオを聞いたり、発音教本を買ってきて舌の位置を矯正したり、口の開け方を練習したりしました。
安河内:すごい、実際にやったんだ……。中学何年生で?
水野:中学1年生です。今はブリティッシュ発音ですが、中学1年生の段階ではアメリカの発音でしたよ。
安河内:水野さんは、小さい頃の英語へのあこがれや英語学習に対するポジティブな気持ちは、中学に入って試験用の英語に邪魔されながらも潰されなかったんですねぇ。
水野:そうですね。安河内先生はどうですか。
安河内:私の場合、まず英語を好きになったきっかけは、アメリカ映画とか洋楽が、その当時、唯一かっこいいものだったのです。若者がかっこいいと思える対象がアメリカ映画であり洋楽だった。学校で英語の勉強をしていたわけではないのですが、小学校の頃から洋楽を聴いたり映画を見たりしてあこがれていたのがひとつ。もうひとつは、自宅の近所に松下村塾みたいな小屋があって、そこである先生が地域の子供たちに英語ではなくて、ローマ字を教えてくれていたのです。
水野:へえ。書くことをですか?
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