私立大学は一段と淘汰が進む厳しい時代へ、少子化に金融危機が追い打ち《スタンダード&プアーズの業界展望》
医科歯科系を除く私立大学法人の帰属収入(総収入)の約7割は、学生生徒等納付金(授業料、入学金、施設設備資金など)である。このため、信用力分析上も、この最大の収入の柱がどれだけ安定しているかが、最も重要な分析項目になる。
学生獲得力は、各種入試における志願者数・動向、志願倍率、歩留まり率(入試合格者に占める入学者の比率)などの数字を分析し、入試政策や学力値を加味して判断する。どういう教育方針のもと、どういう学生をどのような入試方式で取るかを表す入試政策は重要である。
ただし、定員割れに苦しむ大学では、定員に少しでも学生数を近づけることが経営上の最大命題になり、本来好ましいと考える学生像や入試方式と実際とが大きく乖離している大学も多数あるだろう。
青山学院や東京理科大学をはじめ、過去に格付けを付与していた慶應義塾や上智学院も含め、これまでスタンダード&プアーズが国内外で高格付けを付与してきた大学法人は総じて、学生獲得力が非常に高い上、学力上位校であることが多い。
スタンダード&プアーズは、入学者の学力値(いわゆる偏差値)を重要視しているが、それだけで信用力を判断することはない。
高い学力値があれば、その大学が学生集めに窮した場合、大学が自主的に学力値を切り下げることで新たな学生層を獲得することができるバッファを持つと見なせるため、信用力上はプラスに評価するものの、それはあくまで学生獲得力を測る1つの項目に過ぎない。