オランダの半導体製造装置大手のASMLは1月20日、2020年の通期決算を発表した。世界中の半導体メーカーからの強い引き合いを背景に、売上高は前年比27%増の140億ユーロ(約1兆7627億円)、純利益は同37%増の36億ユーロ(約4532億円)と大幅な伸びを記録した。
ASMLはシリコンウエハー上に微細な電子回路を焼き付ける露光装置のトップ企業だ。露光装置のメーカーは世界でもASMLを含む数社に限られ、なかでも最先端の5~7nm(ナノメートル)の製造プロセスに必要なEUV(極端紫外線)露光装置を実用化したのは現時点では同社だけである。
2020年の露光装置の販売台数はEUV31台を含む合計258台だった。EUVの販売台数は2019年より5台増え、その販売額は前年比60%増の45億ユーロ(約5665億円)に達した。
総売上高に占める地域別の比率は台湾が36%で首位を維持したが、2019年の51%からは低下した。一方、2位の韓国は2019年の16%から31%に上昇。3位の中国は前年比微増の18%にとどまった。
「米中の対立状況とともに生きる」
ASMLはEUV露光装置を製造できる唯一の存在であるがゆえに、ここ数年、中国とアメリカの地政学的な駆け引きに巻き込まれている。ロイター通信は2020年1月、アメリカ政府が安全保障上のリスクを理由に、2018年からオランダ政府に対してASML製のEUV露光装置の対中輸出を許可しないよう要請していると報道した。
また、アメリカ商務省は2020年12月、中国の半導体受託製造大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)をエンティティー・リスト(訳注:アメリカの安全保障や外交政策上の利益に反すると判断された企業等のリストで、事実上の禁輸対象)に追加した際、「10nm以下の最先端の半導体製造に必要な設備や技術は許可しない」と声明文にわざわざ明記した。これはEUV露光装置を念頭に置いたものと見られている。
そんななか、1月14日に開催されたフォーラムに出席したASMLのピーター・ウェニンクCEO(最高経営責任者)は、米中の対立状況はすぐには変わらないとの見方を示し、胸の内を次のように語った。
「半導体の製造技術は、米中両国の産業政策の根幹に関わるものだ。したがって、われわれ(企業)は対立が続く状況とともに生きなければならない」
(財新記者:何書静)
※原文の配信は1月20日
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