中国企業が独自に開発した国産CPU(中央演算処理装置)の出荷量が急増している。国産CPUの有力メーカーの1社である飛騰信息技術は2020年12月29日、同社の「飛騰」シリーズの出荷量が2020年は150万個に達し、前年の7.5倍に増加したと発表した。
飛騰は中国で最も早く研究開発が始まった国産CPUの1つだ。開発チームが2014年に法人を設立して商用化の模索を始め、現在は大手国有IT企業グループの中国電子信息産業集団の傘下にある。飛騰信息技術の売上高は2018年にはわずか6000万元(約9億5000万円)ほどだったが、翌2019年に2億元(約31億7000万円)を超え、2020年には一気に13億元(約206億円)に急増した。
背景には、中国の官公庁で使われている外国企業製のパソコンやサーバーを国産品に置き換える「国産代替」の潮流がある。2020年に出荷された150万個の飛騰のうち、8割の120万個が官公庁向けだった。
中国政府は官公庁の情報システムをハードからソフトまですべて国産化することを目指しており、それが1000億元(約1兆5850億円)を超える規模の新市場を創出している。IT業界内では、国産代替の潮流はこれから2022年にかけてピークを迎えるとの見方が主流になっている。
アメリカの対ファーウェイ制裁の影響も
飛騰信息技術の総経理(社長に相当)を務める竇強氏によれば、同社は2021年に前年比33%増の200万個の飛騰を出荷し、売上高を同54%増の20億元(約317億円)に引き上げる目標を立てている。さらに、2024年に100億元(約1585億円)超の売上高を目指す中期目標も掲げている。
「官公庁向けの市場だけでは年間100億元の売り上げは実現できない。それ以外の業界からも(国産代替への)サポートが必要だ」と、飛騰信息技術の副総経理の張承義氏は話す。具体的にはエネルギー、金融、交通、通信などの業界での商機拡大に期待しているという。
なお中信証券の調査レポートによれば、飛騰の出荷が大幅に増加した裏には別の要因もある。中国の通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に対し、アメリカ政府が2020年5月に発動した追加制裁の影響だ。
ファーウェイはイギリスの半導体設計大手アームのアーキテクチャーに準拠した国産CPU「鵬鯤」を独自開発し、サーバーなどに組み込んで販売していた。ところがアメリカの制裁により、鵬鯤の生産継続が困難になってしまった。その分、同じくアームのアーキテクチャーを採用する飛騰の需要が押し上げられた可能性がある。
(財新記者:何書静)
※原文の配信は2020年12月29日
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