「1000億元(約1兆5300億円)プロジェクト」という触れ込みで3年前に華々しくスタートした半導体工場の立ち上げが、資金ショートで頓挫の危機に瀕していることが明らかになった。湖北省武漢市の東西湖区政府が公表した同区内の経済状況に関する報告書のなかで、「武漢弘芯プロジェクトは大幅な資金不足に直面しており、いつストップしてもおかしくない」と指摘したのだ。
武漢弘芯は正式社名を武漢弘芯半導体製造(HSMC)といい、2017年11月に設立された新興半導体メーカーだ。武漢市政府は同社を地元の半導体産業育成のための重要プロジェクトと位置付け、建設工程の第1期に520億元(約7956億円)、第2期に760億元(約1兆1628億円)、合計で1280億元(約1兆9584億円)を投じると発表していた。
前述の東西湖区政府の報告書によれば、第1期工事は2018年初めに着工し、これまでに工場の主要な建屋と研究開発棟がほぼ完成した。装置メーカーに発注した300台余りの半導体製造設備も続々と工場に運び込まれ、そのなかにはオランダASML製の最先端の露光装置も含まれている。
TSMC出身の総経理が辞職か
武漢弘芯は発行済株式の90%を北京光量藍図科技という民営企業が、残り10%を東西湖区政府の国有資産監督管理局の傘下企業が保有する。前者の経営権を握るのは武漢弘芯の董事長(会長に相当)の李雪艶氏と取締役の莫森氏だが、2人は半導体業界ではまったく無名の人物。彼らの背景や資金源は謎に包まれている。
2019年7月、武漢弘芯は半導体の受託製造(ファウンドリ)で最大手の台湾積体電路製造(TSMC)で研究開発部門を率いた経験を持つ蒋尚義氏を総経理兼COO(社長兼最高執行責任者)として招聘し、業界関係者をあっと驚かせた。ところが数カ月前から、蒋氏は武漢弘芯を辞職したという噂が流れている。財新記者は蒋氏に連絡を取ろうと試みたが、コメントは得られなかった。
武漢弘芯のウェブサイトによれば、同社は2019年3月から14nm(ナノメートル)のプロセス技術の研究開発をスタートし、2020年下半期から初期段階のテスト生産を始める計画だった。と同時に、2020年から世界最先端の7nmのプロセス技術開発に着手するとしていた。
だが実態を見る限り、武漢弘芯は資金ショートの難局を打開できなければ「未完のプロジェクト」に終わりそうだ。
(財新記者:羅国平)
※原文の配信は8月24日
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