資金ショートで2年間ストップしていた半導体プロジェクトが、ついに破産を宣告された。7月2日、江蘇省南京市に本拠を置く徳科碼南京半導体科技(タコマ)に対して強制清算の手続き開始の裁定が下ったことが、裁判所の公示で明らかになった。同社の強制清算は南京市中級人民法院が所管し、清算人には北京大成法律事務所の南京オフィスが指名された。
このプロジェクトは、タコマが香港法人を通じて25億ドル(約2673億円)を投資し、南京市経済技術開発区に8インチウエハーに対応する工場を建設。半導体の設計から、ウエハー上に電子回路を形成する前工程、さらにパッケージにチップを封入する後工程まで一気通貫で手がける計画だった。同社は2015年10月に南京市経済技術開発区の管理委員会との協議書にサインし、2016年6月から工場建設に着手した。
タコマの董事長(会長に相当)を務める李睿為氏は台湾出身で、日本、イスラエル、アメリカなどの半導体業界に幅広い人脈を持つ人物とされていた。李氏はタコマの事業パートナーとしてイスラエルの半導体大手のタワーセミコンダクターを選び、2018年2月に技術ライセンス契約を締結。タワーはタコマに電源管理チップやCMOSイメージセンサーの技術を供与するとともに、タコマの生産開始後に1カ月当たりウエハー2万枚相当の製品を買い取るという内容だった。
南京市経済技術開発区が60億円弱を拠出
財新記者が入手した南京市経済技術開発区の文書によれば、同区はタコマのプロジェクトに総額3億8400万元(約58億7520万円)を拠出している。そのうち約2億6600万元(約40億6980万円)が出資、約1億1800万元(約18億540万円)が融資の形式をとり、タワーへの技術ライセンス料や工場の建設費、従業員の人件費などの支払いに充てられた。
ところが、プロジェクトは工場の建屋が9割方完成した時点で資金繰りが行き詰まった。その後、タコマと南京市経済技術開発区は台湾系の半導体メーカーや中国の投資ファンドなど新たな投資家を探したが、交渉はいずれも不調に終わった。前出の文書には、「タコマがすでに資金ショートに陥っていたため、支援先を探すのは非常に困難だった」と記されている。
事情に詳しい関係者によれば、プロジェクトの開始当初、タコマの李氏は「政府の出資は必要ない。自分がファンドの支援を取り付ける」と豪語していた。だが実際には資金調達のめどはついておらず、「プロジェクトが走り出せばカネは後からついてくる」との甘い見通しだったという。
(財新記者:羅国平)
※原文の配信は7月13日
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