イギリスの半導体設計大手のアームで、中国の合弁会社の支配権をめぐる内紛が勃発した。6月10日、アーム本社は中国法人「アーム中国」の取締役会が同社の董事長兼CEO(会長兼最高経営責任者)の呉雄昂(アレン・ウー)氏を解任したと発表。後任として副総裁の潘鎮元(ケン・プア)氏と唐效麒(フィル・タン)氏を共同CEOに任命した。
呉氏の解任理由についてアームは、内部告発者の通報などに基づいて調査した結果、利益相反の報告を怠るなど社内規則に違反した不適切な行為が見つかったためとしている。
ところが奇妙なことに、アーム中国はソーシャルメディア「微信」(ウィーチャット)の公式アカウントなどを通じて声明を発表。「アーム中国は中国の法律に基づいて登記された独立した法人であり、呉氏は董事長兼CEOの職責を引き続き履行する」と説明した。
イギリス本社と中国法人の相矛盾する発表は、アーム中国の株主および経営陣に生じた対立が相当深刻であることを物語っている。
取締役会承認なく個人でファンド設立か
財新の取材に応じたアーム中国の複数の関係者によれば、呉氏の解任案はアーム本社から提起され、合弁会社の中国側株主の同意を得たうえで6月4日の取締役会で決議された。だが呉氏は、この取締役会の召集が合法的なプロセスを経ておらず、決議は無効だと主張している。とはいえ中国側を含む大部分の株主が解任を支持しており、関係者の間では「呉氏の抵抗が実を結ぶ可能性は低い」との見方が多い。
呉氏の不適切行為についてアームは詳細を明らかにしていないが、関係者によれば、アーム本社や中国側株主は呉氏の独断専行ぶりに不満を強めていた。例えば、本社や株主に十分な説明をすることなく四川省成都市や江蘇省南京市に研究開発センターの設置を決めたり、広東省深圳市にアーム中国の本社を置くという株主と市政府の取り決めを無視したりした。さらに、取締役会の承認なしに個人で投資ファンドを設立し、会社との利益相反を招いたという。
アームは2016年に日本のソフトバンクグループが買収。2018年に100%子会社だった中国法人の株式の51%を中国の投資ファンドなどに売却して合弁会社化した。呉氏はアメリカ国籍で2004年にアームに入社。2009年から中国地区の責任者を務めていた。関係者によれば、合弁会社のトップに就任してから呉氏のフリーハンドが拡大し、本社も口を挟めない雰囲気があったとされる。
(財新記者:張而弛、屈運栩)
※原文の配信は6月10日
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