中国人民銀行「零細企業向け」融資、改革の勝算

金融機関の債権6兆円を人民銀行が買い上げ

中国人民銀行は零細企業向け融資の拡大と貸し倒れリスク抑制の「二兎」を追う(写真はイメージ)

「実体経済に直通する金融政策ツールのイノベーションを行う」。5月22日、全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で李克強首相が行った政府活動報告の中に、そんな聞き慣れないフレーズが登場した。金融業界では、この「直通」が具体的に何を意味するのかに関心が集まっていたが、このほどその一部が明らかになった。

中国人民銀行(中央銀行)は6月1日、中国財政省など5つの関係機関と連名で通達を出し、政府活動報告の方針にのっとって企業の雇用維持を支援するための金融政策の強化を打ち出した。人民銀行が財政省とともに総額4000億元(約6兆円)の再貸付枠を設け、地方金融機関の零細企業向け貸出債権のなかから条件を満たすものを一定の比率で買い上げる。これにより、金融機関に貸出拡大への取り組みを促し、零細企業が無担保融資を獲得しやすくするのが狙いだ。

通達の対象となる金融機関には地方都市の商業銀行のほか、農村部に展開する農村商業銀行や農村合作銀行、農村信用社などが含まれる。買い上げの条件は、これらの金融機関が2020年3月1日から12月31日までに新規に貸し出した期間6カ月以上の零細企業向け融資の40%とされた。

債権買い取り貸し倒れリスク負わない訳

人民銀行の説明によれば、この新方式の金融政策ツールを通じて地方金融機関の零細企業向けの新規貸出を約1兆元(約15兆円)に増やし、零細企業がなかなか融資を受けられない現状の打開を図るという。

注目すべきなのは、人民銀行は貸出債権を買い取るが貸し倒れリスクは負わず、金融機関には買い戻しの義務もあることだ。通達によれば、人民銀行が貸出債権を買い取った後も融資の管理や金利の徴収は金融機関が担当し、貸し倒れが起きた場合の損失も銀行が負担する。さらに満1年が経過した時点で、金融機関は人民銀行の買い取り金額と同額で債権を買い戻さなければならない。

本記事は「財新」の提供記事です

なぜこんな仕組みになっているのか。あるアナリストの見立てによれば、要点は中央銀行が債権買い取りを通じて末端の資金の流れをより直接的にコントロールすることにある。金融機関は貸出債権を買い取ってもらうことで流動性を改善できるものの、貸し倒れリスクは転嫁できない。ゆえに「金融機関は野放図な融資拡大には走れない。それが『直通』の真意なのだ」と、このアナリストは解説した。

(財新記者:彭駸駸)
※原文の配信は6月1日

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