アメリカ政府が中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)に対する締め付けを強めるなか、半導体の受託製造(ファウンドリ)で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の動向が注目を集めている。TSMCにとってファーウェイは第2位の大口顧客であり、2019年の売上高の14%を占めるほどだったからだ。
7月16日午後、TSMCは2020年4~6月期の業績説明会の席上で、アメリカ政府の対ファーウェイ制裁への姿勢を改めて表明した。「(アメリカ政府の)関連規制を完全に順守する」としたうえで、5月15日からファーウェイおよび子会社の海思半導体(ハイシリコン)向けの新規受注を停止したことや、現時点では9月14日以降に製品を出荷する計画がないことを説明した。
ただし、ファーウェイとの取引の完全な打ち切りについて、TSMC董事長(会長に相当)の劉徳音氏は「断言するのは時期尚早だ」と言葉を濁した。アメリカ政府は対ファーウェイ制裁に関するパブリックコメントを募集しており、その結果や関連規制の最終的解釈が出るのを待って次の判断を下すという。
ファーウェイのスマホ新製品に遅れ
アメリカ商務省が5月15日に発動した追加制裁は、ファーウェイが通信機器を生産するために欠かせない半導体を狙い撃ちにした。ファーウェイやハイシリコンが設計した半導体の製造をファウンドリが受託する場合、その過程でアメリカ由来の技術やソフトウェアを使用する際には、アメリカ国外での生産を含めて商務省の許可を義務づけたのだ。
TSMCはファーウェイがスマートフォン、基地局、サーバー向けなどに設計した半導体を、世界最先端の5nm(ナノメートル)や7nmのプロセス技術を使って受託生産してきた。それをアメリカ由来の技術なしで続けるのは不可能だ。ただし追加制裁には120日の猶予期間があり、既存製品の受託製造と出荷は9月14日まで影響を受けない。
ファーウェイがTSMCからの調達を完全に断たれたとしても、一部の半導体は中国のファウンドリ最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)などへの製造委託に切り替えられるかもしれない。だが、SMICのプロセス技術はTSMCより3世代遅れており、5nmや7nmのチップは製造できない。
財新記者がスマートフォンの部品サプライヤーから得た情報によれば、ファーウェイは今年後半に発売予定の高級機種「Mate 40」シリーズに搭載する5nmのチップの調達が困難になった。その余波で、ほかの部品の発注スケジュールも再三にわたり延期されているという。
(財新記者:屈慧)
※原文の配信は7月16日
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