5G(第5世代移動通信)スマートフォンやリモートワーク用のパソコンなどの販売増加を背景に半導体の需要が拡大し、半導体チップの製造会社の生産能力が逼迫している。そのあおりを受け、自動車産業が車載用半導体の供給不足という思わぬ苦況に直面している。
財新記者の取材に応じた複数の完成車メーカーと部品メーカーによれば、車載用半導体の不足は個別企業の話ではなく、自動産業全体にとって頭の痛い問題になっている。とくに深刻なのが、自動車に搭載される各種センサーや電子機器を制御するMCU(マイクロコントローラー)の不足だ。
ドイツの自動車部品大手のコンチネンタルによれば、中国の自動車市場は今年後半に(新型コロナウイルスによる販売の落ち込みから)目覚ましい回復を見せたが、一部の自動車工場では半導体が確保できないため生産がストップしているという。
半導体業界にとって、車載用半導体は重要な事業領域のひとつだ。市場調査会社のガートナーによれば、車載用の市場はコンピューター、無線通信、工業用制御機器、家電製品に次いで大きく、2019年には世界の半導体需要の9.6%を占めた。
「大口顧客を優先せざるをえない」
今回の供給不足の根源は、シリコンウエハーの世代に応じた製造設備のキャパシティにある。車載用MCU、ディスプレーパネル駆動用チップ、パワーマネジメント半導体など特定用途に使われる半導体の多くが、1世代前の8インチ(200mm)ウエハー用の製造ラインで生産されているからだ。
8インチ用のラインの新設はもう長い間行われておらず、既存のラインも増産余力がほとんどない。そんななか、消費電力が大きい5Gスマホ向けのパワーマネジメント半導体の注文が急増し、そのほかのチップの生産にしわ寄せが及んでいるのだ。
台湾のある半導体メーカーの責任者によれば、車載用MCUの受注量はもともとスマホ用チップより少ない。メーカーとしては大口顧客向けの生産量確保を優先し、車載用は後回しにせざるをえないという。
「パワーマネジメント半導体だって供給が追いつかない状況だ。生産能力を車載用に回す余裕はとてもない」と、この責任者は肩をすくめた。
(財新記者:屈慧)
※原文の配信は12月5日
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