半導体の受託製造(ファウンドリ)で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の魏哲家総裁は10月15日、同社がアメリカ政府の許可を取得したうえで、中国の通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に対して一部製品の供給を再開するとの噂について、「そのような臆測にはコメントできない」と語った。
これは、TSMCが同日開催した2020年7~9月期の事業説明会での発言だ。ファーウェイは自社設計したスマートフォン、通信基地局、サーバーなど向けの半導体チップの製造をTSMCに委託しており、一時はTSMCにとって第2位の大口顧客だった。
しかしアメリカ政府が今年5月15日に対ファーウェイ制裁を強化したことに伴い、猶予期間が終了した9月15日以降、TSMCはファーウェイへの出荷を停止せざるをえなくなった。2020年末までに出荷を再開する可能性について、魏総裁は「ありえない」と明確に否定した。
上述のアメリカ政府の制裁は、ファーウェイが設計した半導体をアメリカ由来の技術を用いたソフトウェアや設備を使って製造する場合、たとえ生産地がアメリカ国外であっても、アメリカ商務省の許可を得なければ出荷を禁じるというものだ。8月17日には制裁がさらに強化され、出荷禁止の対象がアメリカ国外の半導体設計会社にも広げられた。
7~9月期は売上高、純利益ともに過去最高
そんななか、スマートフォン向けSoC(訳注:システムオンチップの略称。CPUや通信モデムなどの基幹機能を1つのチップにまとめたもの)で世界最大手のアメリカのクアルコム、同じくSoC大手の台湾の聯発科技(メディアテック)、中国のファウンドリ最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)など複数の有力サプライヤーが、商務省に対してファーウェイへの出荷許可申請を行った。しかしファーウェイの非主力製品に向けた少数の例外を除き、許可が下りたケースはまだない。
TSMCは、事業説明会ではこれ以上のファーウェイ関連の情報を明らかにしなかった。だが台湾の市場調査会社のイサイアリサーチによれば、TSMCはファーウェイ向け受託製造を停止した後、その分の生産余力を7nm(ナノメートル)プロセスはメディアテックやアメリカのアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、5nmプロセスはクアルコムからの受注でほぼ穴埋めできたという。
なお、TMSCが発表した2020年7~9月期の業績は、売上高が前年同期比21.6%増の3564億3000万台湾ドル(約1兆3042億円)、純利益が同35.9%増の1373億1000万台湾ドル(約5024億円)と、いずれも四半期ベースの最高記録を更新した。
(財新記者:屈慧)
※原文の配信は10月15日
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