「一般論で言えば、オランダからこれらの顧客に向けてDUV(深紫外線)露光システムを輸出する場合、アメリカ政府に許可を申請する必要はない」──。10月14日、半導体露光装置で世界最大手のASMLのロジャー・ダッセン最高財務責任者(CFO)は、2020年7~9月期決算の説明会でそう明言した。
この発言には伏線がある。10日前の10月4日、中国の半導体受託製造(ファウンドリ)最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)は、同社のサプライヤーの一部が半導体の製造装置や原材料を供給する際、アメリカ商務省の事前の輸出許可が必要になったと発表した。アメリカ政府が中国の半導体産業に対する輸出規制を強めるなか、オランダ企業であるASMLが中国の顧客に引き続き製品を供給できるかに注目が集まっていたのだ。
ダッセン氏はSMICの社名には言及しなかったものの、冒頭の発言がアメリカ政府の輸出規制がASMLのビジネスに与える影響を念頭に置いていたのは間違いない(訳注:アメリカ政府は中国の通信機器大手ファーウェイに対する制裁においては、国外で生産された製品であってもアメリカ由来の技術が使われていれば禁輸対象に含めている)。
米中の政治的駆け引きの板挟みに
ダッセン氏はまた、2020年の中国市場での売上高が10億ユーロ(約1237億円)を超えるという予想を示した。2019年の中国売上高は約8億ユーロ(約989億円)であり、約25%もの高い伸びを見込んでいる。
もっとも、真の焦点はダッセン氏が触れたDUV露光システムではない。微細な電子回路をシリコンウエハー上に焼き付ける露光装置は半導体の製造に不可欠だが、そのメーカーは世界でもASMLを含む数社に限られる。とくに最先端の7nm(ナノメートル)以下の製造プロセスに必要なEUV(極端紫外線)露光システムを実用化したのは、現時点ではASMLだけなのだ(訳注:DUV露光システムは主に10nm以上のプロセス技術に使われる)
それゆえに、ASMLは中国とアメリカの政治的な駆け引きに巻き込まれてしまった。ロイター通信は2020年1月、アメリカ政府が安全保障上のリスクを理由に、ASML製のEUV露光システムの対中輸出に許可を与えないようオランダ政府に要請していると報じた。
この報道について、中国の駐オランダ大使の徐宏氏は当時次のように述べた。「オランダ政府は外国の干渉を排除し、中国とオランダの相互協力の利益に鑑みた決定を下すよう期待する」。
(財新記者:何書静)
※原文の配信は10月15日
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