中国が「個人情報保護法」制定に踏み出す事情 個人情報の濫用に歯止め、公益目的には例外も

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個人情報のみだりな収集や濫用を防ぐための法整備は、中国でも高い社会的関心を集めている(写真はイメージ)

中国の多くの市民が待ち望んでいた「個人情報保護法」の法案が公表された。この法案は、企業などが個人情報を取得・処理する際、事前に本人に「告知して同意を得る」ことを原則に据え、国家機関も原則に従わなければならないことを明記した。10月13日、全国人民代表大会(国会に相当)の常務委員会に提出され、初回の審議が行われた。

ただ原則には例外もある。法律で機密保持が求められている場合や、法が定めた国家機関の責務の遂行に支障を来すケースなどだ。また、(感染症の流行など)公衆衛生上の緊急事態への対応や、公益の観点から報道や情報公開が必要とされる場合などにも部分的な例外が認められる。

なお、個人情報保護法の違反者への制裁については最高5000万元(約7億8500万円)の罰金を科すとされた。

「一部の企業や個人が商業的利益などの動機から個人情報をみだりに収集したり、行きすぎた利用をしたり、違法に売買したりしている実態がある。個人情報の濫用によって人々の平穏な生活が乱されたり、人々の生命、健康、財産などの安全が脅かされるなどの問題を看過することはできない」

全国人民代表大会常務委員会法制工作委員会の副主任を務める劉俊臣氏は、法案の説明会でそう強調した。

「告知と同意」の具体的なルール提示

法案は8つの章と70の条文で構成され、保護されるべき個人情報の概念を明確に定義した。個人情報とは、電子的またはそのほかの方法で記録された、対象者を特定または識別可能なあらゆる種類の情報であり、匿名化された情報は含まれない。また、個人情報の「処理」については収集、保存、使用、加工、転送、(第三者への)提供、公開などの活動が該当するとしている。

原則として掲げた「告知と同意」の具体的なルールも提示された。個人情報の処理に携わる企業や個人は、自らの身元、情報処理の目的、情報の保存期間などを、明示的な方法かつ平易な言葉で対象者に告知しなければならない。一方、対象者は十分な情報提供がなされている前提の下で、同意するかどうかの判断を自分の意思で下す。また、対象者は同意の後にそれを撤回する権利を有する。

本記事は「財新」の提供記事です

法案は個人情報保護法の域外適用についても規定している。中国国内の個人に商品やサービスを提供したり、中国国内の個人の行動を分析・評価したりする目的で、中国国外において個人情報の処理を行う場合には、同法が適用される。法案はさらに、域外適用の対象となる外国企業などが中国国内に出先または代理人を置き、個人情報保護の関連事務にあたることを求めている。

(財新記者:覃建行)
※原文の配信は10月13日

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