「上海汽車は新エネルギー車の高級ブランドを新たに立ち上げる。テスラと競えるクルマ作りを目指している」。10月12日、中国の国有自動車最大手である上海汽車集団の関係者は、財新記者に対してそう明かした。ただし、新ブランドの発表時期については明らかにしなかった(訳注:新エネルギー車は電気自動車[EV]、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の総称。実態としてはEVがほとんどを占める)。
中国の大手自動車メーカーの間で、新エネルギー車の高級ブランドを新たに設立する動きが相次いでいる。北京汽車集団はカナダの自動車部品大手のマグナ・インターナショナルと共同で新ブランド「ARCFOX」を立ち上げ、9月26日に開幕した北京モーターショーで新型車を披露した。東風汽車集団も7月に新ブランド「嵐図」の立ち上げを発表した。
冒頭の上海汽車はそれに続く動きだ。背景にはアメリカのEV大手、テスラの成功にあやかりたいとの思惑がある。テスラは上海市に建設した「ギガファクトリー」で2019年10月から主力車種「モデル3」の現地生産を開始。2020年1月の納車開始からわずか半年余りで、中国市場のEVのメーカー別販売台数でトップに立った。
自社ブランドのガソリン車との競合回避
新興かつ純粋なEVブランドであるテスラの躍進は、自社ブランドのガソリン車とEVの競合に悩んでいた大手中国メーカーに強い刺激を与えた。ある中国の新興EVメーカーの幹部によれば、既存の自動車大手はEV専用の新ブランドを用意しなければ、ガソリン車で築いたブランドの評価まで落としてしまうリスクがあるという。
なぜなら、同じ車格のEVとガソリン車を比べた場合、電池のコストが高いぶん価格はEVのほうが数万元(1元=約16円)高くなってしまう。そんなEVとガソリン車が同一ブランドで同じショールームに並んでいたら、消費者は価格差を受け入れがたいのはもちろん、ブランドに対しても好印象を抱かないからだ。
例えばドイツのメルセデス・ベンツは、2019年11月に新型EVの「EQC」を中国で発売した。ところが、販売実績は最高でも月販数百台にとどまる。一方、EV専用ブランドで好調なのはテスラに限らない。中国の新興EVメーカーで高級路線をとる蔚来汽車、理想汽車、小鵬汽車なども、「コロナ後」の自動車市場が回復するなかで販売を大きく伸ばしている。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は10月12日
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