深刻な経営危機に陥っている中国の自動車メーカー、衆泰汽車がまた一歩崖っ縁に近づいた。深圳証券取引所に上場する同社は6月22日、修正後の2019年の決算報告書を開示。多くの項目で減損リスクに備えた引当金を計上したため、純損失が111億9000万元(約1690億円)に膨らんだ。
それだけではない。決算報告書に対し、監査法人の天職国際会計師事務所は「意見不表明」の判断を下した。これに伴い、深圳証券取引所は衆泰汽車を上場廃止のリスクがある特別処理銘柄に指定した。
巨額損失の原因について、衆泰汽車は決算報告書の中で「2019年後半に運転資金がショートしてクルマの生産が滞ったことが、販売の大幅減少を招いて損失が拡大した」と説明した。同じく決算報告書によれば、同社の2019年の販売台数は2万1000台と前年比86%も減少した。
「模倣車」からの脱却努力を怠ったツケ
監査報告書には、ありとあらゆる問題を抱えた衆泰汽車の実態が記されている。工場の操業は停止し、部品サプライヤーからは代金の支払い遅延で訴訟を起こされている。従業員の賃金は未払いで、銀行口座は(債権者の申し立てなどで)凍結された。こうした状況に鑑み、監査法人は衆泰汽車の経営継続能力に重大な不確実性が存在すると指摘した。
衆泰汽車の経営危機は、ずさんな経営で自ら招いた要素が大きい。決算報告書とともに開示された内部統制の監査報告書によれば、一部のサプライヤーとの間に金額の大きい不透明な資金往来が見つかったほか、資産の取得に際して事前の十分な調査を怠ったり、取締役会での審議なしに外部企業の債務保証を引き受けたりしていたという。
これらは衆泰汽車に限った問題ではなく、中国の弱小自動車メーカーの縮図と言える。中国政府は2015年から2017年にかけて、排気量1600cc以下の小排気量車に対する自動車取得税の減免や、EV(電気自動車)などの新エネルギー車に対して補助金を支給する優遇政策を実施した。衆泰汽車はそれを追い風に販売を急拡大させたが、この時期に大手メーカーの「模倣車」から脱却する経営努力を怠った。そして2018年に優遇政策が廃止・縮小されると、たちまち競争力を失ってしまった。
さらに追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスの流行だ。新車の実売台数を反映する自賠責保険の登録データによれば、衆泰汽車の2020年1~5月の販売台数はわずか3573台だった。
(財新記者:劉雨錕)
※原文の配信は6月23日
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