中国自動車業界のスタートアップ企業の経営危機がまたひとつ露呈した。6月30日、新興EV(電気自動車)メーカーの拜騰汽車(バイトン)が中国での事業活動を7月1日から停止することが明らかになった。
同社は事業停止期間を暫定的に6カ月としており、その間に一部の幹部社員が会社経営の維持とリストラクチャリングに当たる。それ以外の従業員は解雇はされず待機扱いとなる。ネット上に流出した社内メールによれば、バイトンは待機扱いの従業員に7月分の賃金を期日どおりに支払い、8月以降は待機手当を支給するという。
この社内メールから、バイトンでは賃金が今年3月から未払いだったことも判明した。同社は7月10日までに3月分の賃金を従業員に支払い、残りは分割払いすると説明。また、7月3日までに自主退職した従業員には未払い賃金を全額支払うとしている。財新記者の取材に応じたある従業員は、このメールが本物だと証言した。
創業者はBMWや日産の中国事業要職を歴任
バイトンはドイツ出身のダニエル・キチャート氏らが2016年に創業。キチャート氏はドイツのBMWと中国の華晨汽車の合弁会社の高級副総裁や、日本の日産の高級車ブランドであるインフィニティの中国法人の総経理などを歴任した「中国通」だ。バイトンの最初のモデルである「M-Byte」は、ダッシュボードに48インチの大型ディスプレーを搭載するなど大胆かつ完成度の高いデザインで注目を浴びていた。
同社は2018年に実施したシリーズBの資金調達で、国有自動車大手の中国第一汽車集団などから総額5億ドル(約537億円)の投資を引き出した。それを元手にM-Byteの量産を2019年末までに始める計画だったが、もくろみどおりには進まず、2020年内への延期を明らかにしていた。しかし今回の事業活動停止で、M-Byteは第1号車の生産が実現するかどうかも不透明になった。
経営行き詰まりの直接の原因は、追加資金の調達遅れによる資金ショートだ。バイトンは2019年9月、5億ドル規模のシリーズCの資金調達が「間もなく完了する」と発表していた。だが同社の関係者によれば、この資金は今もまだ払い込まれていないという。
(財新記者:劉雨錕)
※原文の配信は6月30日
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