電気自動車(EV)に搭載されるリチウムイオン電池で、希少金属のコバルトを使わない「コバルトフリー」の開発競争に拍車がかかっている。中国の新興電池メーカーの蜂巣能源科技(SVOLT)は5月18日、独自開発した2種類のコバルトフリー電池を発表。早ければ2021年6月から量産すると宣言した。
同社は中堅自動車メーカーの長城汽車の電池開発部門が2018年にスピンアウトして発足。長城汽車の董事長(会長に相当)の魏建軍氏が間接的な大株主であり、両社は現在も密接な関係にある。
SVOLTの総経理(社長に相当)の楊紅新氏によれば、今回発表したコバルトフリー電池のひとつは1キログラム当たり240ワット時の重量エネルギー密度を実現した。長城汽車の高級車のプラットフォームに搭載してテストを繰り返しており、航続距離は880キロメートルに達するという。
鉱山の児童労働問題で電池メーカーが対応急ぐ
コバルトはリチウムイオン電池の正極の原料として使われるが、供給量が少なく高価なうえ、世界生産の半分以上を政情が不安定なコンゴ民主共和国が占めている。現地の鉱山は劣悪な環境下での児童労働が国際的な批判を浴びており、世界の電池メーカーがコバルトの使用量を減らす技術開発を競っている。
中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は5月11日に開いた業績説明会で、同社にはコバルトフリー電池の技術研究の蓄積があり「開発は順調に進んでいる」とコメントした。電池材料メーカーの格林美は5月14日、正極のコバルト含有量を100分の1以下にできる前駆体(訳注:正極材料を合成する基になる金属水酸化物)を開発したと発表した。
だが、完全にコバルトフリーの電池の量産に漕ぎ着けたメーカーはまだなく、SVOLTもどのような代替材料を使うのか技術の詳細は明らかにしていない。また、実は同社は2019年7月にも「コバルトフリー電池を2020年7~9月期から量産する」と発表していた。今度こそ目論見通りに量産を実現できるのか、進展が注目される。
(財新記者:鄭麗純)
※原文の配信は5月19日
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