中国の阿里巴巴集団(アリババ)系列のネット銀行である網商銀行は9月25日、農村部向けの金融サービスに人工衛星のリモートセンシング技術を活用すると発表した。衛星から撮影した農地の画像などの観測データを分析し、農家がこれまでより容易に融資を受けられるようにするという。
農村部には作物の種や肥料の調達、農業機械の購入、収穫期の人手の確保などさまざまな資金需要がある。しかし中国の金融業界では、かねて農村金融の立ち後れが指摘されていた。2019年末に発表された報告書によれば、調査対象の農家の31.39%が「融資を望む」と回答した。ところが、伝統的な金融機関はそれに十分対応できておらず、実際に融資を受けることができた農家は18.38%にとどまっていた。
そこで網商銀行は、融資を希望する農家の耕作地および農作物の資産評価を人工衛星のリモートセンシング技術で効率化する。5日毎の衛星画像から作物の生育状況を観測し、農家の資金需要を分析・予想。そのうえで、融資の前段階では作物の種類と作付面積に応じて与信枠を設定する。融資の実行から返済完了までは、実際の作柄や(自然災害などの)潜在的リスクを常時チェックしながら融資条件を動的に調整していく。
広大な農村部の3分の1をカバーへ
「農村部はあまりにも広く、人手による与信調査は現実的ではない。現地調査のコストが融資1件当たり数百元から千元(約1万5440円)を超えてしまうからだ」。網商銀行で農村金融のリスク管理を統括する顧欣欣氏はそう話す。
同行では人工衛星の画像データに気象データや作物毎の価格データなどを組み合わせ、数十パターンのリスクモデルの解析を通じて収穫量およびその価値を予想する仕組みを作った。農家に対して合理的な与信枠と返済計画を提案できるという。今後、このサービスを中国全土の690地区で展開し、農村部の3分の1のエリアをカバーする計画だ。
ただ、網商銀行の試みに首をかしげる向きも少なくない。ある大手銀行の農村金融の専門家はリモートセンシング技術の活用について、「金融機関の実績や特色をアピールするためならそれなりの意義があるが、農村部での融資はそもそも手間がかかる割に利益が少ない。本腰を入れた展開は容易ではないだろう」と指摘した。
(財新記者:胡越)
※原文の配信は9月25日
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