中国の中央銀行である中国人民銀行は、広東省深圳市で「デジタル人民元」の大規模な実証実験に踏み切る。10月8日夜、人民銀行および4大国有商業銀行(中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行)の深圳支店がSNS(社交サイト)の公式アカウントを通じて発表した。
今回の実験では「礼享羅湖」と名付けられた個人消費促進キャンペーンの一環として、デジタル人民元の「消費券」を深圳市民に配布する。深圳市政府の行政サービスアプリ「i深圳」を通じて事前登録すると、抽選で5万人にそれぞれ200元(約3120円)分が当たるもので、全体では1000万元(約1億5600万円)分のデジタル人民元が配られることになる。
キャンペーンの事前登録は10月9日午前0時に始まり、10月11日午前8時に締め切られる。消費券の当選者には10月12日の午後6時以降、携帯電話のSMS(ショートメッセージ)で通知され、それから10月18日深夜12時までの間、デジタル人民元の決済システムが導入された深圳市羅湖区の3389店舗で自由に使うことができる。
普及のカギは「消費者に選ばれるか」
関係者によれば、実際に消費券を利用するには人民銀行のデジタル通貨研究所が4大商業銀行などと共同開発した「デジタル人民元アプリ」をスマートフォンにインストールする必要がある。アプリ上で本人確認やひも付ける銀行口座の登録などを済ませると、一般的なスマホ決済と同様、アプリが生成する2次元バーコードをスキャンすることで支払いができる。
中国ではアリババ系の「支付宝(アリペイ)」やテンセント系の「微信支付(ウィーチャットペイ)」など、民間のキャッシュレス決済システムがすでに広く普及している。それらとデジタル人民元の違いに関しては、デジタル人民元では利用者の個人情報が決済業者に渡らないことや、商品やサービスの売り手から決済手数料を徴収しないことなどが挙げられる。
一方、消費者は民間のキャッシュレス決済でも手数料は取られておらず、デジタル人民元を利用するメリットがあいまいだ。財新記者の取材に応じた西南財経大学デジタル経済研究センターの陳文主任は、次のように指摘した。
「決済手数料がかからなければ、(小売業などの)売り手側がデジタル人民元に積極的に対応するのは間違いない。しかし消費者向けのキャッシュレス決済ツールが多様化するなか、最終的にどのツールが生き残るかは消費者の選択に委ねられている」
(財新記者:胡越)
※原文の配信は10月9日
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