新型コロナウイルスの影響が長引くなか、中国ではスマートフォン決済のプラットフォームを活用した「デジタル消費券」の配布が増えている。個人消費の回復を促すための新たな政策手段として、地方政府がこぞって採用しているのだ。
「ここ1カ月余りの間に、全国の170以上の都市で総額190億元(約2900億円)のデジタル消費券が市民に向けて配布された」。中国IT大手の阿里巴巴(アリババ)グループの金融会社、螞蟻金服(アント・フィナンシャル)の胡暁明CEO(最高経営責任者)は、5月13日に開かれたデジタル消費券に関するフォーラムでそう述べた。
中国のスマホ決済は、アント・フィナンシャルが手がける「支付宝」(アリペイ)と騰訊(テンセント)が手がける「微信支付」(ウィーチャット・ペイ)が市場を二分している。胡氏によれば、前述のうち100を超える都市がデジタル消費券の配布にアリペイを利用した。一方、テンセントによれば、3月から4月上旬にかけて多数の都市がウィーチャット・ペイで総額100億元(約1500億円)以上のデジタル消費券を配布したという。
ターゲットを細かく設定できる「精度」が強み
デジタル消費券にはどのくらいの消費喚起効果があるのだろうか。アント・フィナンシャルの分析によれば、そのレバレッジ効果の平均値は8倍。これは地方政府が1元分を配れば、市民が自分で8元を足して買い物をするという意味だ。ただし効果についてはより中立な第三者機関による分析が必要だろう。
胡氏によれば、紙の消費券に比べたデジタル消費券の優位性は「精度」にある。消費を喚起したい市民層や、それを通じて支援したい業界や零細事業者など、政策のターゲットを細かく設定できる。さらに不正使用の防止や、財政資金の効率的利用などの面でも精度を高められるという。
一方で課題もある。現時点では、デジタル消費券のほとんどがアリペイとウィーチャット・ペイで配布されている。寡占の弊害を予防するため、利用できるプラットフォームを増やして公平な競争を促すことが必要だ。また、高齢者などデジタルが苦手な人の不利益にならないよう、システムの設計を改善することも望まれる。
(財新記者:胡越)
※原文の配信は5月14日
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