スウェーデンの天才が語る「スマホ」真のヤバさ ポケットに入っているだけで集中力がそがれる

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300人近くの被験者を集めたが、その半数は勉強しながらネットサーフィンをしてもまったく問題ないと思っている。残りの半数は、一時にひとつだけのことに取り組むのを好む人たちだ。いくつものテストを行い被験者の集中力を測定したところ、マルチタスク派の方が、集中が苦手だという結果が出た。それもかなり苦手だという。中でも、重要ではない情報を選別し、無視することができなかった。

つまり、何にでも気が散るようなのだ。

長いアルファベットの列を暗記するという実験でも、マルチタスク派の記憶力は残念な結果に終わった。それでも、何か得意なことがあるはずだ──研究者たちはそう信じ、ある課題から別の課題にどんどん移っていく能力、つまりマルチタスク能力を測ってみることにした。だが、得意分野のはずのマルチタスクですら、マルチタスク派は成績が悪かった。

マルチタスクができるのは人口の1~2%

マルチタスクが苦手な人ばかりではない。現実には、並行して複数の作業をできる人もいる。ほんの一握りながら、「スーパーマルチタスカー」と呼ばれる人々がいるのだ。このような特質をもつのは、人口の1~2%だと考えられている。つまりそれ以外の大多数の人の脳はそんなふうには働かない。余談だが、基本的に女性のほうが男性よりもマルチタスクに長けているそうだ。

複数の作業を同時にやっているつもりで、実際にはこの作業からあの作業へと飛び回っているだけなら、確かに脳は効率よく働かない。ボールを全部落としてしまう下手くそなジャグラーさながらだ。

マルチタスクは集中力が低下するだけではない。作業記憶(ワーキングメモリ)にも同じ影響が及ぶ。作業記憶というのは、今頭にあることを留めておくための「知能の作業台」だ。メモに書かれた番号に電話をかけるとしよう。メモを見て数字を覚え、番号を押す。数字はあなたの作業記憶の中にあり、それは集中力と同様にかなり限定されている。だから多くの人は、6ケタか7ケタくらいしか頭に留めておけない。私など、そこまでも覚えられない。正しい電話番号やメールアドレスを何度も確認するはめになり、毎回イライラする。

ある実験では、モニターに次々と文を表示して、それを150人のティーンエイジャーに見せた。その中にはマルチタスクに慣れた若者も含まれていた。モニターに表示されたのは、きわめて正しい文(「朝食にチーズサンドを食べた」など)もあれば、めちゃくちゃな文(「朝食に靴ひもを一皿食べた」など)もある。どれが正しいかを答える課題だ。

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