スウェーデンの天才が語る「スマホ」真のヤバさ ポケットに入っているだけで集中力がそがれる

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そのくらいちょろいと思うかもしれないが、迅速に答えなければいけない。文はわずか2秒しか表示されないのだ。加えて、スクリーンには気を散らすような情報が表示されていて、それも無視した上でだ。クリアするには、作業記憶がしっかり機能していなければいけない。

果たして結果は? マルチタスクに慣れた若者の方が、結果が悪かった。つまり、作業記憶が劣っていたのだ。

集中力も作業記憶も、私たちが複数の作業を同時にしようとすると悪影響を受けるようだ。きっとあなたは今、じゃあパソコンの電源を切り、スマホはサイレントモードにしてポケットにしまえばいいやと思っただろう。だが、そんなに単純な話ではない。スマホには、人間の注意を引きつけるものすごい威力がある。その威力は、ポケットにしまうくらいでは抑えられないようなのだ。

「スマホを無視すること」に処理能力を費やす

大学生500人の記憶力と集中力を調査すると、スマホを教室の外に置いた学生の方が、サイレントモードにしてポケットにしまった学生よりもよい結果が出た。学生自身はスマホの存在に影響を受けているとは思ってもいないのに、結果が事実を物語っている。ポケットに入っているだけで集中力が阻害されるのだ。

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ポケットの中のスマホが持つデジタルな魔力を、脳は無意識のレベルで感知し、「スマホを無視すること」に知能の処理能力を使ってしまうようだ。その結果、本来の集中力を発揮できなくなる。よく考えてみると、それほどおかしなことではない。ドーパミンが、何が大事で何に集中すべきかを脳に語りかけるのだから。日に何百回とドーパミンを放出させるスマホ、あなたはそれが気になって仕方がない。

何かを無視するというのは、脳に働くことを強いる能動的な行為だ。きっとあなたも気がついているだろう。友達とお茶をするために、スマホを目の前のテーブルに置く。気が散らないように画面を下にするかもしれない。それでもスマホを手に取りたい衝動が湧き、絶対にさわらないと覚悟を決めなければいけない。驚くことでもない。1日に何百回もドーパミンを少しずつ放出してくれる存在を無視するために、脳は知能の容量を割かなければいけないのだ。

スマホの魔力に抗うために脳が全力を尽くしていると、他の作業をするための容量が減る。それほど集中力の要らない作業なら大きな問題にはならないだろう。しかし本当に集中しなければならないときには問題が起きる。

アンデシュ・ハンセン 精神科医

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Anders Hansen

ノーベル賞選定で知られる名門カロリンスカ医科大学を卒業後、ストックホルム商科大学にて経営学修士(MBA)を取得。現在は王家が名誉院長を務めるストックホルムのソフィアヘメット病院に勤務しながら執筆活動を行う傍ら、有名テレビ番組でナビゲーターを務めるなど精力的にメディア活動を続ける。前作『一流の頭脳』は人口1000万人のスウェーデンで60万部が売れ、その後世界的ベストセラーに。

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