1つ目の「呪縛」は「間違った『型』に縛られる」ことです。
一方的に「説明」することは正しい型ではない
私は以前、対面でエグゼクティブのコーチングを行っていたのですが、コロナの影響で、すべてがキャンセルになりました。思い悩んだ末、オンラインでのコーチングを始めたところ、「ウェブ会議でのプレゼンや記者会見対応」「社員間のコミュニケーション」などに悩む企業からの依頼が急増しました。
そもそも、以心伝心文化が強く、日々顔を合わせたり、いわゆる「飲みにケーション」をしたりすることで、「伝え下手」を補完していたわけですが、この状況ではそれもままなりません。多くの日本企業が「リモートでの社員間のコミュニケーション」に課題を抱えています。
一方で、名だたるグローバル企業の関係者に話を聞くと、オンラインでもコミュニケーションの頻度が高く、エグゼクティブの伝える努力が半端ないことに驚かされます。
「しっかりと前を向き、堂々としたジェスチャーと語り口で、説得力を持って語る海外のエグゼクティブの姿に、心を動かされる」そうです。そういうお手本を見ているうちに、社員たちも「正しいコミュニケーションの型」を習得していくというわけです。
一方で、日本企業の場合、トップが社員にメッセージを発信するのは月に1回。味気ないメールや読み上げているだけのビデオメッセージなど、「聞き手の心拍数をまったく上げない無味乾燥な情報発信」に終わっているケースもしばしば。
スピーチであれば、スクリプトを作って、一言一句、棒読みする。プレゼンであれば、字ばかりで、わかりにくいスライドを見せて、ろくに、カメラに目をやることもなく、つまらない「説明」に終始する……。これでは、伝わるわけがありません。
こういった「お手本」「正しい型」が身近にないのが、日本人の「1つ目の呪縛」です。学校でも同じ。読み書きは教えられても、話し方の教育はありません。教師とて誰も、正しい作法を知らないのです。
子どもたちは、生気のない調子でただ、一方的に「説明」することをコミュニケーションの「型」だと思い込んで育ち、営々とその伝統が受け継がれていくのです。「話し方の基本ルール」を教わる場もお手本も教科書もない。これでは、その力が上がるわけもありません。
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