第4回 日本の経営系研究者はバカなのか?

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なぜ、英語で論文を書かなくてはいけないのか

筆者の学問的背景は応用物理学です。博士号も工学です。応用物理学の研究者として初めて書いた日本語の論文は、日本の学会誌からの依頼原稿でした。それ以前に書いた10本以上の論文は、全て英語で書きました。べつに英語が得意だからでも、研究成果に自信があったからでもありません。応用物理学会には英語の論文誌しかなかったからです。

 応用物理学会が出している学術論文誌は”Japanese Journal of Applied Physics”です。英語が大の苦手であった筆者にとって英語で論文を書くことは難行苦行でしたが、そのおかげで世界の一流の研究者と対等に交流する機会を得ることができました。そんな経験から、学者として自らの世界を広げようとしないことは、すでに学者として死んでいるといっても過言ではないと思っています。

 もちろん、母国の読者のために母国語で研究成果を発信することは悪いことではありません。それどころか義務であると考えます。ドイツやフランスにも母国語の経営学の論文誌があります。もちろん中国にも韓国にもあります。それでもこれらの国の研究者たちは、英語でも論文を書いて投稿しているのですから、語学の得手不得手は言い訳になりません。

 母国の読者のために母国語で情報を発信することと、母国語でしか学術論文を書かない、ということは、意味が大きく違います。自分の研究成果の学術的価値を測り、研究力を高め日本の学術的信頼度を高めるために英語で学術論文を書いて、一方でその研究成果を社会に伝え、普及させるために日本語で報告や解説を書けばよいのです。

 報告や解説を発表することが可能なワーキングペーパーやディスカッションペーパーはすでにいくつかあります。東工大イノベーションマネジメント研究科でも、学外の人が投稿可能なワーキングペーパーをWeb上で発行しています。

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